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第八章・6
「あ、瑠衣」
「こんにちは。お邪魔してます」
マンションに帰った瑠衣を待っていたのは、寿士と、もうひとり。
(陽詩さん!)
「俺たち今から、寝室使うから。瑠衣はバスルームで一人エッチでもしてなよ」
「え~? 瑠衣くん、そんなことするの?」
「いつもバスでオナニーするんだよ、こいつ」
浮かれた気持ちが、一気に墜ちた瑠衣だ。
「寿士さん! 余計なこと言わないで!」
瑠衣の叫びも聞き流し、二人はキスを交わしながら寝室へ入ってゆく。
『ただ、大きな試練がこの先二人を試します。それに打ち勝てば、未来は輝かしいものになるでしょう』
瑠衣は、武田の言葉を思い出していた。
(大きな試練って、陽詩さんのこと!?)
『意地を張らずに、素直になることがカギになりそうよ。お相手にも、そう伝えておいてください』
「そんなこと、言ったって……」
素直に、陽詩さんとエッチしないで、って言えばいいの?
そうすると、寿士さんはやめてくれるの?
「無理だよ、そんなの……」
しゅん、と瑠衣はバスルームへ入って行った。
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