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第九章・3
「それと、キッチンが粉っぽいし、卵の黄身が飛び散ってるし。何かあったの?」
「え、えと。僕、ちょっと料理の練習してて、それで」
「何で」
「たまには、僕がご飯作って寿士さんに食べてもらおうかな、って思って」
寿士は、露骨に不愉快そうな顔をした。
「余計な事するなよ。俺の料理に、不満でもあるの?」
「そんなこと、ないよ」
だったら大人しく一人エッチでもしてろ、と寿士は自室へ入ってしまった。
「人聞きの悪いこと、言わないでよ! 僕だって、いつもいつもオナってるわけじゃないよ!」
まったく、と瑠衣もまた、自室へ飛び込んだ。
「何とか、バレなかったよね」
デスクの上には、まだ温かいココアスポンジが置いてある。
「明日はこれに、ガナッシュクリームを塗って」
そして、寿士さんに美味しいって言ってもらうんだ。
ふふふ、と笑みがこぼれる。
「早く明日にならないかな。早く14日にならないかな」
瑠衣は、機嫌よく浮かれていた。
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