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第九章・5
「今日、少し遅くなるから。眠かったら、先に休んでていいよ」
2月14日の朝、寿士はそんなことを言ってきた。
「何で!? 遅くなるって、どれくらい?」
「陽詩とデート。帰りは9時以降になると思う」
そんなぁ……。
寿士さんに、チョコケーキ渡したいのに。
一緒に食べて、バレンタインしたいのに!
「ね、せめて8時くらいにならない?」
「解んない。早くなるかもしれないし、遅くなるかもしれない」
そこまでで、寿士は大学へ行ってしまった。
「陽詩さんも、きっと寿士さんにあげるよね。チョコ」
ゆっくりと、瑠衣はうなだれた。
だが、立ち直りは早かった。
「じゃあ、セッティングして待っていよう。花とか飾って、雰囲気作っとこう!」
瑠衣は素敵な食器を引っ張り出したり、花屋へ行ったりと、忙しく動き始めた。
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