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第十章 お見合い写真
ちょっと、実家に帰る。
そう寿士に言われて、瑠衣は悲しくなった。
「寿士さん、せっかく学校休みなのに~」
一日ずっと一緒に、いられると思ったのに。
「父さんがさ、うるさいから」
「何で?」
「お見合いの件で」
「寿士さん、お見合いするの!?」
まだしない、と寿士はうるさそうに言った。
「写真見て、実際に会う人選ぶだけ」
「やっぱり、するんじゃない。お見合い」
近いうちに、寿士がお見合いをする。
その現実は、瑠衣に重くのしかかった。
「寿士さん、結婚するの?」
「気が早いなぁ」
でも、婚約くらいはさせられるかもしれない。
そう、寿士は考えていた。
良家同士の、政略結婚。
俺も、楠家の駒のひとつにすぎないんだから。
「結婚しても、瑠衣は愛人として可愛がってあげるからな~」
捨て台詞にも似た言葉を残して、寿士は出かけて行った。
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