83 / 152

第十章・2

「いらないよ、そんなの!」  ぷん、と瑠衣はドアから離れた。  ソファに腰かけ、寿士が残していったアイスティーをすする。 「お見合い、か。結婚、かぁ」  きっと、お金持ちで優秀なαの女の人と結婚するんだろうな、寿士さんは。  じわっ、と涙が浮かんできた。 「僕だって、寿士さんと結婚したいのに」  でも僕は、家を追い出された身で。  何のとりえもない、Ωで。  そして、寿士さんの愛人で。 「無理。どう頑張っても、無理」   『相性は、抜群にいいはずよ。未来も希望に満ちているわ』  占い師・武田の言葉が思い出された。 「未来、希望に満ちてるの?」 『ただ、大きな試練がこの先二人を試します。それに打ち勝てば、未来は輝かしいものになるでしょう』 「大きな試練に勝てなければ、未来は真っ暗ってことだよね……」  勝てるのかな、僕。  試練に。  クッションを抱いて、ころんと横になった。  瑠衣は、そのまま眠ってしまった。

ともだちにシェアしよう!