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第十章・6
「ね、瑠衣。俺のこと、好きだよね?」
「んぅ……。寿士さん、好きぃ……。大好き……」
それが聞きたかった、と寿士は瑠衣から離れた。
「そのまま寝るなよ、瑠衣。先にシャワー浴びるからな」
「うん……」
『んぅ……。寿士さん、好きぃ……。大好き……』
シャワーを浴びながら、寿士は瑠衣の言葉を反芻していた。
身体が熱くなる。
脳に血が上る。
「俺も、さ。好きなんだよね。多分」
がっ、とバスルームの壁を拳で打った。
「あんな野良猫の、どこがいいんだろ」
どうして瑠衣は、いいとこのお坊ちゃんに生まれて来なかったんだろう。
見合い写真に彼の顔があれば、一も二もなく選んだというのに!
「でも……」
血統書付きの瑠衣では、たぶん好きにはならなかっただろう。
自由奔放で、飾らない魅力が、野良猫にはある。
瑠衣の言動全てが、たまらない魅力に満ちているのだ。
「ああ、うぜぇ!」
家柄も、資産も、αに生まれ落ちたことも、何もかもがうざったい。
寿士は荒々しく体を拭くと、バスルームから出ていった。
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