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第十一章 甘い罠

「瑠衣、最近機嫌がいいね」 「うん!」  3月に入り、寿士の大学は春休みになった。  ほとんど毎日そばに居てくれる寿士を、瑠衣はとても嬉しく思っていた。 「何、見てるの?」 「ん~、温泉の名所とか」  寿士のタブレットを覗き込むと、そこには露天風呂付きの素敵な客室の画像があった。 「わぁ、すごい」 「瑠衣、温泉好き?」 「行ったことないから、解んない」 「じゃあ、行こうか。温泉」  ぱちぱちと、瑠衣は瞼を瞬かせた。 「二人で?」 「うん」  ぱあぁあああっ、と瑠衣の顔は明るく晴れ渡った。 「うん! 行く! 行きたい、温泉! 寿士さんと、二人で!」  では、とさっそく宿の予約を始めた時、寿士のスマホが鳴った。  発信は、父親からだ。 「何だろ」  寿士はスマホを手にして、ソファにもたれた。

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