88 / 152
第十一章 甘い罠
「瑠衣、最近機嫌がいいね」
「うん!」
3月に入り、寿士の大学は春休みになった。
ほとんど毎日そばに居てくれる寿士を、瑠衣はとても嬉しく思っていた。
「何、見てるの?」
「ん~、温泉の名所とか」
寿士のタブレットを覗き込むと、そこには露天風呂付きの素敵な客室の画像があった。
「わぁ、すごい」
「瑠衣、温泉好き?」
「行ったことないから、解んない」
「じゃあ、行こうか。温泉」
ぱちぱちと、瑠衣は瞼を瞬かせた。
「二人で?」
「うん」
ぱあぁあああっ、と瑠衣の顔は明るく晴れ渡った。
「うん! 行く! 行きたい、温泉! 寿士さんと、二人で!」
では、とさっそく宿の予約を始めた時、寿士のスマホが鳴った。
発信は、父親からだ。
「何だろ」
寿士はスマホを手にして、ソファにもたれた。
ともだちにシェアしよう!