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第十一章・2
電話を切った後の寿士は、見るからに不機嫌になっていた。
「瑠衣、温泉の予定は保留」
「え……?」
「お見合い、しなきゃならなくなった。明後日に」
「そんな急に!?」
先方の都合があるんだって、と寿士は面倒くさそうだ。
「だ、誰とお見合いするの?」
「石井製薬の娘と、宮迫出版の息子」
「3人でお見合いするの!?」
そんなわけあるか、と寿士はもたれたソファから顔だけ上げた。
「午前が石井で、午後が宮迫」
「忙しいね……」
はぁ、と寿士は溜息をついた。
まさか、この春休みに見合いを持ってくるとは思わなかった。
「瑠衣、あのさ。瑠衣?」
瑠衣は、眉間に皺を寄せて何か考え込んでいる。
「瑠・衣!」
「あのね、寿士さん。『宮迫』って、どっかで聞き覚えがあるんだけど」
「そんなことより、フェラしてくんない?」
「う、うん。いいけど」
瑠衣はソファから降りると、寿士の脚の間に割り込んだ。
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