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第十一章・5

 見合いの席で、陽詩は必殺技を封印してくれた。 「大学のキャンパスで、何度かお見かけしました」  そんなことを言って、しらばっくれていた。 (陽詩、どういうつもりだ)  付き合っています、まで喋らなくとも、友人です、くらい言っておけば縁談は有利に進むのに。 (それにしても……)  それにしても、今日の陽詩はいつもより魅力的に感じられる。  スーツ姿の正装を見慣れないせいか、それともお見合いという気負いが自分にあるせいか。 「では、僕たちはこれから二人でお茶でも飲みたいと思います」  陽詩の言葉に、寿士は我に返った。 「そうですか。それでは、あとは若い二人に任せて、我々は退散いたしますか!」  笑う父の声が、やけに癇に障る寿士だ。 (ったく、気軽に調子のいいこと言って)  双方の両親と仲人が席を立ち、二人きりになった途端に陽詩はいつものペースで喋り始めた。

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