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第十一章・6
「お見合いの席に座るって、どんな気持ち?」
「さっさと解放されたい。それだけだよ」
「僕が相手でも?」
「てか、何で見合い相手が陽詩なの。もしかして、俺が楠グループの息子って知ってて近づいたの?」
う~ん、と陽詩は勿体ぶって紅茶に砂糖を入れ、ティースプーンでゆっくりかき混ぜた。
「それは、後付け。最初はね、素敵な人だな、って目を付けといたんだ」
「ふ~ん」
クリスマスを前に寿士がフリーになったと知って、すぐに告白したのだ、と陽詩は言う。
「来るものは拒まず、って噂、知ってたから。まさか愛人がいたとは知らなかったけど」
そこで笑う陽詩に、寿士はイラついた。
瑠衣を、バカにされたような気分になったのだ。
「じゃ、俺この辺で」
「待って」
陽詩は、寿士の手を取った。
「部屋、取ってあるんだ。行こうよ」
ふふふ、と微笑む陽詩が、ひどく妖艶に見える。
抗いがたい、誘惑を感じる。
「ちょっとだけだぞ」
「それでいいよ」
二人は、エレベーターに乗って最上階へ向かった。
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