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第十五章・6
「父さんの分からず屋!」
「この頑固者め!」
もう、これ以上の話し合いは不要だ、と和士は持参したアタッシュケースをテーブルの上に置いた。
「1千万円ある。寿士と別れなさい」
「父さん!?」
瑠衣は、呆れていた。
寿士が、山岡に300万円渡した時のことを思い出していたのだ。
(お父さん、寿士さんと思考回路が同じ……)
「あなた、私と瑠衣さんのお話し、聞いてなかったの?」
静子が、和士をたしなめた。
「瑠衣さんは、お金で動くような方じゃないと思うのだけれど」
(お母さん、ごめんなさい。僕、最初50万円で動きました……)
そんな混沌を、明るい声が破った。
「やぁやぁ、遅れてすまんね。なにせ、この足だからね!」
左足に包帯を巻き、松葉杖を持って現れたアロハシャツの老人に、瑠衣は見覚えがあった。
「あ! あの時のお爺さん!」
「おや? 寿士の恋人とは、君だったのかね!?」
老人は、以前足をくじいた時に、瑠衣が助けたその人だった。
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