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第十五章・7

 和士は、老人の登場に慌てた。 「お父さん、どうしてここへ!?」 「可愛い孫のイイ人ならば、見てみたくもなるだろう?」  残念ながら、いい人などではありません、と和士は口をへの字に曲げた。 「今ここで、別れてもらうところです」 「お爺ちゃん、父さんに何とか言ってやってよ!」  お爺ちゃん。  この人が、寿士さんのお爺ちゃんだったなんて!  瑠衣は、目を白黒させていた。  どこまでカオスになれば、この場は収まるんだろう!?  そんな瑠衣の隣に、老人・武士(たけし)は腰かけた。 「先だっては、ありがとう。骨にひびが入っていたよ。でも、おかげさまでこうしてまた会えたね」 「もう、痛くはありませんか?」 「お薬を飲んでいるから、大丈夫だよ」  瑠衣に語る武士の表情は、実に甘かった。  まるで、もう一人孫ができたような顔つきだ。  そして、言うのだ。 「あぁ、これで曾孫の顔が見られる!」  式はいつだね、とまで言い出す父に、和士は焦った。

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