132 / 152

第十六章 素直な心

 正式な婚約は、寿士の大学卒業後に交わすこと。  結婚は、寿士が社会に出て一人前になってから。  そんな条件を付け、父・和士は、寿士と瑠衣との交際を許した。 「その間に、俺が心変わりする、とでも思ってるの、父さん」 『しないとも限らんだろうが』 「俺は、瑠衣を絶対に手放さないから」 『勝手にしなさい。後悔しても知らんぞ』 「でも、許してくれてありがとう」 『礼なら、母さんとお爺ちゃんに言いなさい』  その後、二言三言交わして、寿士は父との通話を切った。 「やったぞ、瑠衣。父さんが、折れた!」 「ひ、寿士さんッ。挿れたまま電話するの、やめて……ッ!」  あ、ごめん、と寿士は腰を浮かせた。 「ぃや、んッ! う、動かないでぇえ!」  マンションの寝室で、二人は睦み合っていた。  その最中に、和士から電話があったのだ。

ともだちにシェアしよう!