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第十六章・3
「何だろ。また、父さんかな?」
起き上がって見ると、発信は母・静子だ。
「母さん?」
もしもし、と寿士が通話する間に、瑠衣は彼の身体を拭き清め始めた。
(寿士さんの、お母さんからだなんて。一体何だろ)
ホテルで会った時は、控えめながらも芯のしっかりした女性に思われた。
(それに、すごく優しくて。美人だったな)
社長夫人といえば、つんと澄ましたイメージを思い描いていた瑠衣だったが、それは良い方に裏切られた。
「解った。瑠衣にも、そう伝えるよ。それじゃ」
寿士の電話が終わり、瑠衣はその顔を覗き込んだ。
「何だったの?」
「うん。婚約に至るまでにやっておくべき、今後のこと」
(何だろう。儀式みたいなのがあるのかな?)
寿士は瑠衣の身体を拭いてあげながら、語り始めた。
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