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第十六章・4
「まず、俺は明日から学校が始まる。それは、解ってるよね」
「うん。でも、結構ヒマだ、って」
4年生になる寿士は、週に数回ゼミに通って卒論の準備をするだけだ。
就活もする必要が無いので、空き時間がたっぷりできる。
「だから、瑠衣と一緒に存分に遊べる、と思ってたんだけど……」
ゼミのない日は実家に帰って、秘書から経営の基礎を学ぶこと。
その間瑠衣は、作法やマナーを、楠家の専属講師から学ぶこと。
「これが母さんからの、結婚の条件らしい」
「うわぁ……」
寿士と一緒に、いろんな所に旅行ができる、と浮かれていた気分が、一気に萎んだ瑠衣だ。
「でも、仕方ないよね。何たって、大富豪の家に入るんだもん」
僕、やっていけるかな。
不安げな瑠衣を、寿士は励ました。
「大丈夫。瑠衣なら絶対できる、って」
それから、と寿士はさらに母からの伝言を瑠衣に伝えた。
「俺を、瑠衣のご両親に紹介してくれないか」
瑠衣の両親に、母・静子と共に二人で報告をする。
これも、静子が提示した条件だった。
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