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第十六章・5
「僕の、お父さんとお母さんに……」
瑠衣の眼に、涙が浮かんだ。
「会いたくない。会えないよ、いまさら」
「瑠衣はもう、立派な俺の婚約者なんだ。胸を張って、実家に帰っていいんだよ」
「でも」
家柄が、違い過ぎる。
寿士サイドの親族が了承しても、僕のお父さんやお母さんが反対するかもしれない。
そんな危惧を、瑠衣は抱いた。
「大丈夫。瑠衣独りじゃない。俺や、母さん、お爺ちゃんがついてるんだ」
だから、安心して。
優しい、寿士の眼差し。
瑠衣は、その眼にほだされた。
「解った。お父さんは土日が休みだから、寿士さんの都合のいい日を教えて」
「その意気だよ、瑠衣」
そうと決まれば、と寿士は瑠衣に顔を近づけた。
「もう一回、ヤッとこう」
「また!? せっかく体拭いてきれいにしたのに!?」
また拭けばいいさ、と寿士は瑠衣に口づけた。
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