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第十六章・6

「お父さんもお母さんも、電話に出てくれない……」  瑠衣は、落ち込んでいた。  家を追い出されてから、もう3年近く経つ。  そろそろ許してくれてるかも、との瑠衣の期待は砕かれた。 「この調子だと、手紙出しても読んでくれないよね」 「瑠衣、こんな時こそ楠家の名前を出すんだよ」 「どういう意味?」 「母さんに、楠グループのアドレスで手紙を出してもらおう。待ち合わせは、ホテル・コスタ。瑠衣と俺との結婚を許して欲しい、って書いてもらえば、出て来ざるを得ないよ」  寿士さん、ごめんね、と瑠衣は涙をこぼした。 「僕、いつもいつも、寿士さんに助けてもらってばかりいる」 「俺たち、結婚するんだぜ? これくらい、当然だよ」 「ありがとう、寿士さん」  瑠衣は、寿士にぎゅっとしがみついた。  あったかい、体。  そしてその中には、頼もしいハートが脈打っている。 「寿士さん、大好き」 「俺もだよ、瑠衣」  だから、もう泣かないで。  

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