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第十六章・7

 寿と瑠衣、そして静子と武士がホテル・コスタに到着した時、すでに瑠衣の両親が席に着いていた。  そして4人の姿を見つけた時、立ち上がって深く頭を下げた。 「このたびは、息子がご迷惑をおかけしまして。すぐに、連れて帰りますので!」  父は瑠衣の腕を掴むと、そのまま引きずるように歩き始めた。 「ちょ、ちょっと待ってください!」  寿士が慌ててそれを止め、静子が席に着くよう促した。 「本来なら父親が同席するところですが、あいにく手が離せませんで」  祖父の私でご勘弁ください、と武士が言うと、ようやく瑠衣の両親は椅子に掛けた。 「まさか楠グループの息子さんをかどわかしているとは。この通り、お詫び申し上げます」  そして、テーブルに額がつくかと思われるほど頭を下げた。 「待ってください、かどわかす、なんて。瑠衣さんは、御両親が思っておられるような人ではありません」  僕が、瑠衣さんを見初めたんです、と寿士は語り始めた。

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