141 / 152

第十六章・10

「またホテルの部屋取ってるとか、信じられない」 「瑠衣のご両親説得に成功したら、ご褒美にホテルデートしたい、って思ってたんだよ」  瑠衣と寿士は、ホテルの一室でくつろいでいた。 「ああ、でも、まだ手が震えてる」 「瑠衣、立派だったよ」  よく頑張ったな、と寿士は瑠衣を抱き寄せ額にキスをした。 「寿士さんが、付いててくれたから」  あと、お母さんとお爺さんも。  たくさんの人の協力で、僕は幸せを掴めたんだ、と瑠衣は嬉し涙を流した。  瑠衣の両親は、寿士との結婚を許してくれたのだ。 「それはね、瑠衣の人徳だよ。素直な心が招いた結果、なんだよ」  素直な心。  瑠衣は、いつかの占い師の言葉を思い出した。 『ただ、大きな試練がこの先二人を試します。それに打ち勝てば、未来は輝かしいものになるでしょう』 『意地を張らずに、素直になることがカギになりそうよ。お相手にも、そう伝えておいてください』 「寿士さん」 「なに?」 「愛してる」 「俺も、瑠衣を愛してるよ」  そっと、二人で口づけあった。  静かに、長いキスをした。

ともだちにシェアしよう!