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第十七章 恋人はサンタクロース

「寒いと思ったら、雪だ」  寿士は肩をすくめ、急いでマンションへ入った。  時は流れ、季節は冬になっていた。  12月24日。  クリスマス・イヴである。 「瑠衣のやつ、クリスマスのディナーは任せて、なんて言ってたけど」  その言葉を信じて、寿士はデパ地下のデリカを何も買わずに帰って来た。 「ま、出来が悪くても全部俺が平らげばいいことだし」  あの、バレンタインのガナッシュチョコケーキのように。  瑠衣の作ったものならば、どんなに不味くても食べられる自信はあった。 「ただいま」 「おかえり、寿士さん!」  子犬のように玄関まで駆けて来る瑠衣は、あいかわらずだ。  ただ一つ、変わった点と言えば。 「はい、お帰りなさいのキス♡」  ちゅっ、と瑠衣は寿士に短いキスをした。  もちろん、唇にだ。 「すっかり新婚気分だなぁ」 「寿士さんがお爺ちゃんになってもキスしてあげるから、安心して」  それは嬉しいね、と寿士は瑠衣に腕を引かれて室内へと入って行った。

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