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第5話 僕には小さい頃
僕には小さい頃から妙な習慣があった。寝るときに必ず窓を少し開けて寝ることだ。
夏は勿論冬の寒い季節でも窓を少し開けて寝る。窓側に布団があったから外の空気が気持ち良くてしていたら癖になってしまったらしく、真冬でも開け布団にくるまって寝た。
だからあの日も当然窓を開けて寝ていたんだ。当たり前のこと。
もしもあの日窓を閉めて寝ていたら僕の運命は変わっていたのかもしれない。そう思うんだけど蒸し暑く寝苦しい夜に窓を閉めて寝るなんて尚更あり得ない。
だからだから後に僕は思った。
あぁ僕って捕食されるために生まれてきたんだなって。
気持ち良く友達と飲んで1Kのアパートに帰り、ほろ酔いで自分の着ていた服を脱ぎシャツに付いた血を洗い流す。
それから自分もシャワーを浴びて寝た。酔っていてもしっかり忘れずに窓は開けて寝たんだ。
僕にとってはそれは当たり前のこと。
そして次の日、僕はスマホのアラームで起こされた。
「……んね……眠い……」
アラームを止めてまたベッドに横になる。
今日は大学が休みだ。バイトはあるけどそれまでのんびり寝ていられる~。
ごろりと寝返りをうち再び寝かけたその時だった。
~♪
聞き慣れないメロディがスマホから流れたのだ。
なんだ?この音……?
しかし自分のスマホを手にとってみても着信もメッセージもきていない。
不思議に思いながら起き上がりベッド脇の小さなテーブルの上を見た。
「え!?」
知らないスマートフォンが置かれあり、メロディが流れている。
何?誰のスマホ!?
眠気はぶっ飛び大混乱だ!
ヤバい!酔っぱらって陸のスマホ持って帰ってきた!?
だけど陸のスマホカバーと違うし……
え?だだ誰の!?
帰り道で拾ったとか?
酔っていて覚えていない!昨日の僕教えて!?
狼狽えている間もスマホはずっと鳴り続いている。
誰かの落と物かもしれないし、持ち主自らかけているのかもしれない。
そう思いとりあえず電話に出てみた。
「……はい」
「花房桜偲」
「……?」
「君、花房桜偲くん?」
「は、はい……?えっと……どちら様ですか?」
「M大N学部に通う三年生。大学に通いながらバイトの掛け持ちして学費と生活費を稼ぎ、現在都内のボロアパートで独り暮らし中」
「へ」
「あってる?」
「あってますけど……あの……」
「それと君は施設出身だったかな?」
「……は、はぁ……そうですけど」
「そうか……それはいい」
「あ、あの~」
なんだこの人?僕の知り合い?誰!?
学校の人?それともバイト先の誰か?
うっかり聞かれたこと素直に答えたけど不味かったかもしれない。
「そのスマホだけど、俺のなんだ」
「え」
「拾ってくれてありがとう花房くん。受けとりたいし拾ってくれたお礼もしたいから、今日の昼に会えないかな?」
「え、えと、すみません。昼からバイトが入っていて……。あ、でもその前なら渡す時間あります!」
「……バイトかぁ。そのバイトは多分なくなったと思うよ。じゃあ11時にK駅前でね」
「は?え、あの!っ!」
??……切れたんだけど……どういうこと?
あいつ誰?何で僕のこと知ってるんだ?
もしかして調べられてる?
今のご時世個人情報なんてあってないようなものだし、僕知らないうちにヤバい奴に目をつけられた?……嫌……いやいやないだろう。
ヤバい奴ってそもそもどんな奴だよ。ヤバい奴ならもっとましな奴に目をつける筈。
こんななんの取り柄のない僕なんかに目をつける奴なんているわけがない。
「うーん。まぁ、スマホ返すだけだし。気にしすぎか?」
どうやら相手の感じからして昨日僕がスマホを拾ったのは本当みたいだし、個人情報言って来たのは驚いたけど、もしかしたら知ってる人かもしれない。
早めに待ち合わせ場所に行って、急いで返してからバイトに行こう。
そうすればギリバイトに間に合うはずだ。
狭い家の片付けを少ししてから自転車でK駅へと向かった。
まさかこのアパートに二度と戻ってくることがないなんて夢にも思わず。
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