待ち合わせの駅前に着いたけど、そういえば駅のどこ口か確認してないことに気がついた。 どうしよう……どこだろう。 自転車を二時間無料の駐車場に止め、駅前の百貨店の前に佇み知らないスマホを見つめた。 ……ロックがかかってるからこっちからはかけられない。 「どこにいればいいかな……連絡くるかな」 そわそわとしている時に声をかけられた。 「花房くん」 「はいぃ！」 声をかけられて思い切り振り返ると、息が止まりそうになってしまった。 え！ 「スマホありがとう」 「……」 この人誰？ こんな人……こんなイケメンさん知らないんだけど。 目の前にはスーツを着たサラリーマンみたいな人が立っている。 サラリーマン？ビジネスマン？ 出来そうって感じの人で何か凄いカッコいい。 「……ぁ」 「……」 「あ、あのっ！これですよね。どうぞ」 そう言いながら手にしていたスマホを差し出した。 「……」 ひゃー！見とれてしまった！ってこのイケメンは何で僕の名前知ってるんだろう。 「じゃ、僕はこれで」 「これでって……ご飯行こうか」 「えっとすみません。有り難いんですがこれから僕バイトあるんで」 「バイトはなくなったって言ったはずだけど」 「？」 「こっちだ。行くよ」 「え！だってバイトっ！」 「……信じられないならバイト先に連絡してみたらいい」 え！はあぁ？ 何言ってるんだろうこの人！ そう思いながらも歩きながらバイト先に連絡をしてみる。 「え」 僕……や、辞めたことになってますけど。 何で？どうして？ そして気がついたら凄いピカピカの車に乗せられていた自分。 運転手さんがいる。タクシー？いやいやちょっと違う…… 「今日はとりあえずイタリアンにしたんだ。気に入ると思うよ」 「あの……」 「何」 「バイト……僕辞めたことになってるんですけど……何でですかね」 「あのバイトはもう君に必要ないからね」 「……？」 「それと夜のスーパーのバイトも必要なくなったから手続きしておいたよ」 「手続き……ですか？」 「そう」 理解不能で思わず隣に座っているスーツの人の顔を見つめた。 見つめたというかガン見だ。 (あ、黒髪なのに瞳の色は薄いブルーだ)そんな余計なことが頭を過ったけど、えーと？ この人がもしかしてバイト先に連絡したの？ちょっと待って…. 「あの……もしかして」 「……」 「僕……貴方に何かしました？」 「……」 「あ、分かった！スマホなんですけど。実はどこで拾ったか覚えてなくてですね。拾って直ぐに警察に届けたら良かったんだけど僕その時酔ってて記憶がさっぱりなくて……スミマセン！直ぐに返せなくて。お仕事に支障ありましたよね。絶対ありましたよね。僕のバイト先に連絡するくらい本当は凄く怒ってますよね！」 「……」 「……」 「……お前ってアホだな」 「え」 「まぁ……いいけど」 「よ、よくないですよ！」 「にしても……良い匂いだな」 「？」 良い匂い？何の匂い？ あ、お店に着いたからかな？ 自分にはその匂いは全く分からなかった。