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第9話 気がついたら
気がついたら僕はどこかに横になっていた。
ぼーっと見慣れない天井を見上げ、さっき起きたことを思い出す。
「気がついたか」
「……えっと……ここ……どこだっけ」
「君の家。ま、俺の家でもあるけど。起き上がれるか?」
「はい。大丈夫……」
そう言いながら身体をお越し座った。指先は冷たいし気分もあまり良くない。
どうやらソファーに寝ていたみたいだ。
うわぁ……
このソファーもだけど家中のインテリアが高級そうだなって思った。
外は夕方なのか薄暗くなっている。
「まだフラつくだろうから無理するな。貧血だ」
「貧血……僕が?」
「そう。俺が君の血をもらったから」
「……え」
「君の血。何であんなに旨いんだ。驚いた。はぁ……旨すぎてうっかり失血死させるところだった」
「は」
「こんなこと言っても信じて貰えないと思うけど、信じてくれないとこれから困るから話すよ」
「何を……ですか?」
「俺が吸血鬼だってこと」
隣に座って京はわざとニヤリと笑って見せた。
その笑った時に見えた白い歯犬歯がなんとにゅっと鋭く変化したではないか!
「えええ!?」
「こういうの実際見てもらって確認した方が分かりやすいだろ。でも痛くなかったはずだぞ。俺吸うの上手いから」
「きゅ吸血鬼……ってあの吸血鬼?」
「そう」
「……な、な、な!?」
「桜の血質はあの時に香りで確信したけれど、今味わってみて予想以上に優良な生き血であることがわかった。食生活を見直せばもっともっと……旨くなるはずだ。これは……マジで……楽しみ……楽しみ……ブツブツ……」
「ちょっとどういう……」
「桜の血、もろ俺好みの血だということ。香りといい味といい栄養分も申し分ない。だから桜は今日から俺専用になったわけ。血は桜の身体に負担にならないペースで貰うし、当然それに見合った報酬も十分出す。今までのバイトなんかより破格だよ。勿論大学も通ってオッケーだ。」
「……」
「あぁ抵抗を考えてるなら無駄だからね。君のことは全部調べあげてあるから君みたいなゴミ1人を潰すのは簡単だし。ここでいい子にして生活していた方が賢い」
「……」
「理解出来てるかな?」
「……な、なんとか……」
「あれならまた吸って見せようか?桜の首に……」
「あ!あの!もうこれ以上は……っ!」
「だよな。顔色悪いしな」
そういいながら手が伸びてきて前髪をくしゃりと触られた。
その手はとても温かい。
にわかには信じがたいけど、見せられた変化した犬歯とか自分の今の体調とかを考えるとそうなのかな?って思ってしまう。
それに京の容姿の良さが輪をかけてる。
見た目がいいからいつか観た映画に出てきた美麗なヴァンパイアと京さんが重なった。
「えと……一応理解はしました。信じられないけど、とりあえず頑張って信じてみます」
「へぇ素直」
「うーん。素直って言うか僕あんまり人を疑ったりするの得意じゃないんで。京さんってそんなに悪い人に見えないし。吸血鬼さんもこの世の中色々大変なのかなぁって思ったり。あ、でもさっき一瞬だけど臓器売買とかする悪い人かなって思っちゃったけど」
「…………そんなブラックな。命をとろうとまでは思わないよ。それに生き血は殺してしまったら味わえないし」
「い、生き血……ひぇ……」
「まぁこれからよろしく。この家は桜の好きに使ってもらって構わないから。あ、もう一度言うけど逃げても無駄だって言うの理解してね」
「は、はいぃ」
こうして現状を良く理解出来ないまま僕は城崎京って人の家に一緒に住むことになった。
逃げたら捕まるんだろうし、バイト出来ないし家もないならここに居るしかないよなぁ。
……吸血鬼ってお金持ちなんだなぁ。
これから僕どうなるんだろうなぁ……そう思う自分がいた。(のんき!)
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