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第11話 夜に仕事を

*** 京 夜に仕事を終え家に帰宅すると、ふとした違和感に気がついた。 ? 人がいる気配がまるでないのだ。生活感がない。 リビングからキッチン、洗面所、バスルームも乾いていて使った形跡がなかった。 冷蔵庫から洗濯機にかけて彼が使用した形跡が無いことに内心焦った。 まさかあの野郎……逃げたか!? いない?そう思い彼に使用させているゲストルームへと向かった。 「おい!」 ガチャリとドアを開けると、既に寝ていた様子の桜がいた。 「……ん?あ、京さんおかえりなさい。お久しぶりです」 「お前……」 「……はい?」 眠そうな桜はベッドから起き上がりこちらを眺める。 彼からは微かに良い香りが漂っていた。 しかし顔色はあまり良くない。 「お前、ちゃんと生活してたか?」 「……?してましたよ」 「風呂使ってないだろ。それにキッチンも使った様子がないぞ」 「風呂?えっと風呂は近所の銭湯に行ってたまに入ってます。調べるたらあったんで。キッチンは使う用事ないんで……」 「……お前自炊しないのか……冷蔵庫の中好きに使って構わないって言っただろ」 「あ、そっか。えーと、ごめんなさい。人様の物だと思うと何か使えなくて。それにほらあの冷蔵庫もキッチンも凄いピカピカで、僕何かが触ったら指紋ついて汚れちゃうなって思って」 「……」 「あ!でもちゃんとご飯はコンビニでおにぎり買って食べてますから大丈夫ですよ!」 「……ついでに聞くが洗濯は……」 「えーと、銭湯に行ったついでに軽く洗ってます。近所のコインランドリーに行ったら凄い高級な雰囲気してて入れなかったんで」 「……あぁ……そう……」 「はい!」 笑顔……眠そうだが笑顔だ。 そうだな最近のコインランドリーはお洒落で性能もいいらしい。 利用したことはないがこの辺ならそれなりにいいサービスが付いているだろう。 しかしたまに銭湯……で洗濯……飯はコンビニ……ずっとか? ゲストルームを見渡せば、安っぽいハンガーにかけられた洗濯物らしいヨレヨレの衣類がいくつもだらしなく干されていた。 ……ハッキリ言って……この光景に目眩がする。 「……夕食は何を」 「今日は昆布です」 「……」 「あ、おにぎりですよ!昆布おにぎり。鮭おにぎりも買ってあるけど朝ごはんにしようと思って」 お、おに……米と海藻…… 仕事だったから仕方がないが二週間もこいつを放置していたことを後悔した。 顔色も悪いしはだ艶も良くない。寝ていたとは言え服も大分ヨレヨレだ。そんな食生活できちんとした栄養が摂れていると思えないし、貧血も回復している訳がない。

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