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第22話 「桜」
「桜」
「あ、京さん」
マンションの出入口で車から降りてきた京さんとバッタリ会った。
「出かけてたのか?」
「はい、駅前で友達と少しお茶してました」
「そうか」
「あ!もしかして彼が噂の家政夫さんですか?」
ん?
知らない声が車から聞こえて来て、その方を見るとスーツ姿の男性が車から降りてきた。
「あの……」
「部下だ」
「はじめまして、鷹野 と申します。社長から花房君のことは少~しだけ伺っております。聞いても全然話して下さらないんで少~しだけ。お目にかかれて嬉しいですよ」
にこりと笑うと目じりが下がって優しい印象の人だと思った。
スラリとした体型でスーツが良く似合っている。
京さんと並ぶと何か凄い雰囲気満点……迫力がある気がした。
「桜帰るぞ」
「あ、社長無視しないで下さい!そうだ!もしあれなら花房くんも今度のパーティー連れていらしたらどうですか?」
「……あのなぁ……」
「可愛い付き添いがいれば面倒なことも色々と回避できるのでは?」
「……」
パーティー?って何だろう。
鷹野さんはとっても笑顔で話してるけど、京さんは怒っているのか眉間にシワがよっている。
仕事の話何だろうなぁ……僕はお邪魔かなぁと思っていたら、京さんは鷹野さんを無視してマンション内へ。
僕も京さんに背中を押されながら一緒に自宅に帰って来た。
「京さん!話の途中だったんじゃないの?鷹野さんずっと叫んでるけど」
「……ん、あぁ、気にするな。全く問題ないから」
「そっか」
「それより桜」
「はい?」
「……っと……何でもない。今夜は酢豚にするぞ」
「はい!楽しみです!」
京さんは器用で料理も和洋中何でも作れてしまうしどれもとっても美味しい。
カッコ良くて仕事もできてる。家事も何でもこなしてしまうなんて凄いなぁって尊敬してしまう。
僕なんかと全然違う。
「桜?どうした」
「え」
「今何か考えてたろ?ぼーっとしてたぞ」
夕食を食べながらうっかり考え事をしていたようで、京さんに心配されてしまった。
「あ、いや何でもないです。すみません」
「……どうした」
「え。…………えーと」
「……」
「……京さんって……凄いなぁって」
「…………は?」
「京さんって何でも出来て凄いなぁって思ってました。仕事も出来るし料理も上手い。掃除も洗濯物だって綺麗にたためる。この酢豚も凄く美味しいです。それに比べると僕は……」
「……」
「不器用で何も出来ないなぁって。あはは」
「……桜は不器用だものな」
「そうなんです。やろうと頑張っても上手く出来なくて……」
「ふ……」
「……スミマセン。お役にたてなくて」
京さんに笑われてしまった。
いや、笑われて当然だし、笑われたこと何て今まで数知れずだ。
だからいいんだ気にしない。
だけどだけど今は少し心がチクリとした。それは否定できない。
「ご馳走様でした」
美味しい夕食を食べ終え、食器をシンクへと運び綺麗に洗う。
直ぐに京さんも席を立ち手伝ってくれる。
京さんから食器を受け取りまとめて洗いすすぐ。
これくらいはやらないとって真剣に皿を磨いていると、京さんが謎の行動をしている。
僕の頭を撫でている……??
「……?京さん?」
「……はは……」
「……」
また笑われた。
今何で笑われているか分からないけど笑われてる。
それにまだ頭をよしよしくしゃくしゃと撫でられているんだけど、どうしてだろう。
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