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第23話 「自分が不器用…

「自分が不器用だから……」 「……」 「何も出来ない、役に立てない役立たずだと思っているんだろ」 「…………そ、そうです……ね……」 髪、髪を摘まんでいじられてる。で、また撫でられている……はてはて?はて? 「そこまで自己評価を下げると慰めて欲しいのかと勘違いされるぞ」 「……え!そういう意味じゃ……ないです」 「何も出来ないと自分自身で勝手に決めるんじゃない」 「ぇ……っ」 !!? 京さんの手が僕の顔に触れた……と思ったら口を塞がれキスをされていた。 皿を手にしていたら絶対落としていた!口を塞がれ直ぐに京さんの舌が僕の舌を絡めとる。 その時に一瞬舌を噛まれる感覚があったけど痛みはなく、そのままクチュクチュとした音が吐息と共に零れ濃厚なキスが続いた。 「……は……っ…………」 「……」 シンクに寄りかかっているから何とか立っていられるけど、そうでなかったら完全に腰砕けになってる。 こんなこと思ったらダメなんだって思うんだけど、凄く……凄く気持ちがいい! その気持ちに引っ張られて自分も京さんの舌に絡めてしまいたいとか……わー!そんな邪な気持ちを持ってしまう。 ごめんなさい!! これは京さんの吸血行為であり決してキスではない!キスではっ!! 「はぁ……はぁ……はぁ……」 「…………ごくり……」 「……きょ……きょうさ……」 「……はぁ……はぁ……ふぅ……さくら……」 「あの……」 「桜を評価するのは雇い主のこの俺だ。勝手にお前の評価を下げられては俺が困る。少し前向きに改善してくれ」 「……は、はい……」 近い……顔か近い。 京さんの整った顔は色っぽく、唇は唾液で濡れていた。 ほんのり赤いのは僕の血だろうか。 息の上がっている僕の口元に京さんの指が触れ濡れていた唇を親指で拭ってくれた。 「風呂に先に入りなさい」 「…………はい」 いきなりキスされたせいで身体が上手く動いてくれなくて、完全にロボットみたいな動きで部屋へと戻った。 キスは吸血行為だから気にしない。 変に意識するものじゃないんだ。 血をあげる為に僕はここにいるんだ。仕事なんだ仕事! ……仕事って分かってるけど!ドキドキが止まらないよ!! キス……凄い……キスをするのは京さんが初めてじゃないけど(男の人では初めてだけど)こんな深いキスはなかなかない。 一方的にされるキスなんて……いや、そもそもキスではないんだけどね吸血なんだけど初めてだ。 着替えを用意しながらもんもんと考える。 それに勝手に自己評価するなって言われたなぁ。 ……慰めて欲しかったわけじゃない。 こんな不器用な自分が情けなくてつい愚痴として出てしまった。 京さんみたいになれたらいいなって思うし……もっと京さんの役に立てたらいいなって思うんだ。

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