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第25話 少し笑いながら

少し笑いながら京さんはお風呂に行ってしまった。 京さんは風呂に入るときに磨りガラスにしないで入浴する。 ここに来てまだ間もないとき、それを知らずに洗面所に行った馬鹿な僕は、京さんがシャワーを浴びているところに遭遇してしまい、情けない叫び声を上げてしまったのだ。 濡れた京さんの裸体……引き締まった背中とかお尻は(よく見てしまったー!)見事でまるでサービスシーンのようだった。 赤面し腰が抜けた僕に気がついた京さんはガラス越しに笑っていた。 だから京さんが風呂に入っている時は洗面所には近付かないようにしている。 磨りガラスにしてくれないし! あれは心臓に悪い! 男の僕でも見とれてしまう、それくらいカッコいい後ろ姿(特にお尻)だったんだ。 もうお互いに夕食も済ませているし、風呂も入り終わっていた僕は自分の部屋へと戻った。 ベッドに寝転がりながらまだ終わっていないレポートを見直す。 こうしていると直ぐに眠たくなるから面白い。 うとうとしていると風呂上がりの京さんがやって来た。 「桜、ちょっといいか」 「はーい」 ベッドから起き上がると京さんの方から来てくれた。 寝間着姿の京さんからはふわりとお風呂上がりのいい匂いがする。 髪もセットしていない自然な感じが少し年齢を若返らせていて新鮮だ。 ベッドに腰を下ろした京さんが僕に向き合いじっと見つめてくる。 「……口開けて」 「……は、はい!」 吸血だ。 そう思った時に顎に京さんの温かな指先が触れた。 ゆっくりと京さんの顔が近付き唇と唇が触れる。あ、歯みがきしたてでミントの味…… そして直ぐに舌が重ねられドキンと胸が跳ねた。 ……ちゅ……くちゅ……温かな吐息と舌が絡む音がやけに耳に響いてきて変な感じがする。 唾液と一緒に血液を絡めごくりと飲む京さんは大胆で、本当に食べられてしまいそうでゾクゾクするし少し怖いと思った。 だけどいっぱい摂取してもらって満足してもらいたい。 もう最近の僕は京さんに応えたいという気持ちで頭がいっぱいなんだ。 気がつくと京さんにしがみつく感じで両腕を背中に回しているし、京さんも僕を抱きしめてくれていた。 背中から腰、ちょっとそこはお尻ですよ~って際どいとこまで撫でられる。 効力良く血液を摂取して貰えるならどうぞ撫でて下さいって感じだけど少し恥ずかしい。 「……はぁ……はぁ……甘いな……唾液も甘い……」 「はぁ……はぁ……」 「……桜」 「……は、はい……」 「前も思ったけど……嫌じゃないのか」 「何をですか」 「こうやってキスされることだよ」 「……」 「……」 「……い、いやでは……ないです……けど……」 「……そうか」 「は、はい」 男同士でこうやってキスみたいな行為をするなんて、京さんはどう思っているんだろう。 「あの……京さんは」 「うん?」 「……あ、いや!なんでも!なんでもないです」 「そうか……じゃ、おやすみ」 「おやすみなさい!」 頭をぽんぽんと撫でて京さんは僕の部屋を後にした。 ……き、聞けなかった。 聞いたら……聞いてしまったら僕は後悔するかもしれない。 そう思ったら聞けなかった。 後悔ってなんなんだよって突っ込みをいれたけどその答えはでない。 そのままベッドに横になったけど、寝れる気が全くしないし! 胸がドキドキして……眠れそうにないよ…… 血液を摂取する為の行為だと分かっているけどやっぱりこれは一般的にはキスな訳で……どうしても気持ちがほわほわと変になってしまうんだ。 「……はぁ~なんだこれ……」 駄目だ。京さんの顔が頭に浮かんできてしまう。 あの濃厚なキスが舌が……抱き締められて温かい身体とか息遣いとか……そんなのが頭の中を駆け巡って心が乱れる。 馬鹿……桜偲落ち着け。 勘違いするな。 これはバイトだろ。 これで僕はお金もらってここに住んでるんだからな。 冷静になれ。 吸血行為だ。 血をあげる……吸ってもらうのが仕事だ。 落ち着け……落ち着けーー!! ……そう心の中で一晩中繰り返し続けた(寝れなかった)

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