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第26話 週末になり、
週末になり、パーティー当日。
「わ、ぴったりです」
「当然」
僕は仕立てられたピカピカのネイビー色のスーツに袖を通した。
スーツ自体数えるくらいしか着たことがないからそれだけで緊張してしまうし、こんな光沢のある艶やかなスーツをこんな僕が着ていいのかな。
「……良く似合ってる。しかし思いの外ジャストサイズだな。太ったか?」
「前より少し体重は増えたと思います。美味しいご飯を毎日食べさせてもらっているので」
えへへと笑いながら京さんを見つめた。
ダークな色のスリーピーススーツを着た京さんは、髪も少し後ろに流すようなヘアスタイルで、いつもと雰囲気が違う。
スタイルはいいし足長いし……こんなカッコいい男性を女性たちがほっとかないだろうなぁ。
そんなことを思いながらつい見惚れていた。
僕の髪も前髪ちょっとサイドに流しおでこが見えるアレンジを京さんがしてくれた。
「……あまり連れて行きたくないな」
「え」
「いや、なんでもない。そろそろ迎えの車が来るから行くぞ」
「は、はい!」
背中を優しく叩かれて着なれないスーツに違和感を感じながら靴を履いた。
今……連れて行きたくないって言ってたなぁ。
まぁそうだよねぇ。
こんな僕なんかをパーティーに連れて行きたくないよな。
それにこんなに素敵な高級スーツも似合ってないんだろうし。
京さんに余計なお金掛けさせてしまったな。
京さんのお荷物だろう僕は、家でおとなしく留守番していた方が良かったのかもしれない。
京さんを困らせることはしたくないから、先に一人帰って来てもいいし、極力邪魔にならないようにしよう。
「お!花房くん!スーツ良く似合ってるよ!今夜はよろしくね」
「は、はい!よろしくお願いします!」
鷹野さんが車のドアの前で待っていてくれていて握手してくれた。
「桜、早く乗りなさい」
先に乗り込んだ京さんは少し機嫌が悪そうだから慌てて乗り込む。
パーティー会場は都内の有名ホテルで立食形式だ。誰もが皆びしっとスーツを決めているし女性はドレスで華やかで優雅だ。
企業のレセプションパーティーって言ってたけど恐ろしくセレブな人達が集まってる気がする。
「緊張します……」
「花房くん姿勢よくね。大丈夫自信持って」
姿勢よく。姿勢よく。姿勢よく笑顔で挨拶……
鷹野さんのアドバイスと京さんに前に言われたことをぶつぶつ繰り返しながら僕は京さんの後にくっついて歩いた。
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