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第31話 席を外して
席を外して店の外へ出た。
そうだ杏ちゃんにあの時の返事、まだ保留にしてたんだっけ!
少し深呼吸してから電話に出て、好きだった人と話をした。
少し酔っていたけど、きちんと話を丁寧に丁寧にした。
話してみると意外と冷静で落ち着いている自分がいて不思議だ。
話を暫くして店内に戻った。
京さんの飲み物は赤ワインに変わっていた。
「すみませんでした」
「いいや」
「……えっと……元カノからでした」
「……へぇ」
「はい。ちょっと前になんですけど、やり直さないかって連絡もらってたんです。その返事をまだしてなかったんで」
「……」
「あんないい子は僕には勿体無いんで。有難いけどきちんと断りました」
「……勿体無い?」
「はい!凄く可愛くていい子なんですよ」
「……桜はその子のことを好きなんじゃないのか?」
「好きだけど……うーんなんていうか……仲のいい友達?もう恋愛の好きではないみたいな。そんな感じです」
「へぇ……もうその子とセックスしなくていいと?」
「ぶっ!!!な!な!な!」
何てことを急に言うんだこの人!!!
「ん?ガキじゃないんだからいいだろ?って……はは!……顔が真っ赤だぞ」
「きょ!京さんのせいでしょ!恥ずかしいこと言わないで!もう!あ!ワインでスーツ……汚れてないかな……あ」
ジャケットが汚れてないか確認した際、ポケットの中にパーティーで貰った名刺を入れっぱなしだったことに気がついた。
取り出した名刺をカウンターの上に並べ、京さんにもらった経緯を話す。
「………………しっかし……まあこっちは裏にプライベート用の番号まで書いてあるな……」
「ん?あ、そっちの人はうちの大学に友達がいるって……」
「ふーん、本当かねぇ」
「本当……じゃないの……?」
「そういう話って大抵作り話だったりする」
「そう……なんですか?」
「お前を飲みに誘う口実だよ」
「はぁ……そんなに飲みに行きたかったんですかね」
「まぁ……口説きたくなる気持ちは分かるけどな。何処の誰かは覚えたから名刺は燃やしてしまおう」
「口説く……??え、燃やす?」
「桜のことをパーティーに連れて行きたくないって意味はそういうことだよ。お前に惹かれる奴が必ずいるだろうと思ったから」
視線を目の前のワイングラスから隣の京さんに移すと、京さんは僕のことをじっと見つめていた。
いつもより優しい目元にドキンとしてしまう。
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