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第39話 桜がこの家に来て
**京**
桜がこの家に来て同居生活が始まったけれど、そもそも人嫌いの俺が赤の他人と生活できたのは、桜を人という認識よりも餌的な位置付けが強かったからだ。
手間はかかるが良い匂いだし生き血は旨い。それでもご飯を作れば喜んで食べるし、桜の顔色が良く元気になれば満足する自分がいるのは確かだ。
控えめな性格で地味な印象を与えるが素顔は悪くない。
一時、俺に素直に従うのは余裕のあるリッチな生活ができるからかと考えた時もあったが、報酬として振り込んだ金は殆ど使用しておらず、それを問うと「京さんが色々買ってくれるんで使う必要がないんです……」と困った顔をしながら言われた。
「必要最低限のモノしか買い与えていない」と言えば「ぜ、絶対違います!」と返された。
「もっと使いなさい」……と、俺が言ってる時点でこの考えは却下だ。
金銭感覚がまるで違うので理解できないが、無駄遣いをしないのは分かった。
金が目当てではない無欲さに呆れたし毒気を抜かれ、そうなると自然と世話をやきたくなるし可愛がりたくなる。
ペットみたいだけれど、ペットに吸血というキスはしたくない。
桜の部屋に赴き口から吸血をしたがペット以上に可愛いと思った。
桜はこれは自分の仕事だと思っているだろうが、桜の濡れた唇や潤んだ瞳、触れたくなる身体は吸血と同じくらい魅力的で性的だ。
無理やりにでも抱いてみたら好きか嫌いか分かるか?
嫌……無理やりに抱いてみたいと思っているってことはもう惚れているんじゃないか?
このお馬鹿な年下男子に。
しかし導き出された答えに納得がいかない。
成功者であるこの俺がこんな大学生に?餌に惚れるとかあり得ないだろ。
気に入っているが好きとか……と、否定しつつも「でも本当は惚れてるんだよな?」と囁くもう一人の自分がいた。
それを決定付けたのはパーティー当日にオーダーメイドのスーツを桜に着せた時だった。
以前桜の服を購入した時に測らせ、そのサイズでオーダーしたスーツは少しキツめで、華奢な桜の体型が良く分かるし、尻や太もものラインが際立つ印象的な仕上がりになってしまった。
あの時から少し太ったらしい。元が細いのだから今の方が健康的で良いのだけど、目眩を起こしそうなくらい可愛かった。
可愛らしさを少し解消しようと幼さい印象の桜の前髪を弄ったら、逆に色っぽさを引き出してしまい更に焦った。
これを今日の大衆の中に連れて行くのか……
そう思った時点で俺は堕ちたのだ。
この青年のことに執着しているということ……このスーツを脱がせ抱いて自分のモノにしてしまいたいということ。
はいはい、そんなこと分かってましたよ。
自覚したよ……そう思い観念した。
人に見せたくないくらい触らせたくないくらいこいつのことが好きなのだ。
……それなら一刻も早く自分のモノにしてしまおう。
このスーツを脱がすのは俺だし、桜の主はこの俺だ。
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