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第44話 そう……僕は

そう……僕は前から京さんに惹かれていたんだ。 好きとか嫌いとか、そういう個人的な感情ではなく、人として何でもこなしてしまう京さんは魅力的で凄いなって思ったから。 そんな京さんが会社の偉い人だって後から知って更に驚いたんだ。 この人は人であって人でない吸血鬼だ。吸血鬼の皆さんはこんな何でもできてしまうのかな?人ではない吸血鬼だから、こんな大胆な拉致も普通にしちゃうの?不思議でならなかった。 何より不思議なのは、僕は京さんのことが全然怖くないということ。 初対面の赤の他人に僕は誘拐されたのにだ。逃げたいって思うのが普通だろうに、それがないから……自分の感覚はおかしいのかなって思った。 それとこの家に来て気がついた僕のある変化。 あんなに眠るとき毎日必ずと言っていいほど開けていた窓を一切開けなくなったこと。 365日習慣になっていたことがなくなったのは何故だろう。その時考えても分からなかったけど、今ならなんとなく分かる。 僕はきっと吸血鬼のご飯として生まれたんだ。吸血鬼に補食される為だけに存在しているんだって、僕は僕のことを見つけて欲しくて毎日窓を開けていたんだろう。 そう思ったらこの現状に納得出来たんだ。自分の都合のいい考えだけどしっくりきたし、城崎京という吸血鬼にちゃんと向き合えた気がした。 こんな何でもできる人に食べて貰えるなら光栄だなぁ……もりもり血を食べて貰って構わない……そう思った。 掃除も洗濯も料理もまともに出来ない駄目駄目な僕が、京さんにしてあげれることは生き血を吸ってもらうことだ。 吸血してもらうとき、僕の胸がドキドキしているのは、京さんの容姿が素敵だから。 ……生き血を飲んでもらえるだけで幸せだって思っていたのに…… 京さんからの好意は、生き血あっての好意だ。だから僕はこの家に住み優しくしてもらえ美味しい料理も作ってもらえる……ドキドキするキスも吸血行為だからだ!と必死に割りきっていたのに。 それなのに……おこがましくもあの女性に僕は嫉妬してしまった。お似合いで羨ましいなぁ京さんと結婚するのかなぁって……それで京さんが幸せなら構わないって…… だけど、そうなったら京さんと一緒にはいられなくなってしまう?そう思ったら胸が苦しくなって咄嗟に馬鹿な行動をしてしまった。 あの時、離れたくない!って心が叫んでた。 ちゅっと額にキスをされる。 「良かった」 「……よ良かったって……京さん絶対確信犯です。こんな状態であんなこと言われてたらもう……」 「桜が鈍感過ぎて回りから固めたんだ。桜、ちょっともう一度言ってくれる?」 「え…………好きです?」 「……嬉しいな」 「ごご迷惑では……」 「ったく、今さら?」

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