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第5話

 なのに性懲りもなく足を組み替えるふうを装って、モリにしなだれかかってみる。  すると、いったん立ち上がるそぶりをみせたあとで肩を抱き寄せてくれた。このうえなく優しい手つきで洗い髪をとかしてくれた。  ラブラブな雰囲気が醸し出されて安心した。  そのくせ内壁にさざ波が走るあたり、我ながらビッチの誉れが高いったら。今日は完璧にスカを食ったけれど二、三日も経てば学食でメニューを選ぶノリで、また男をピックアップするはず。  後腐れがない男、という条件さえ満たしていれば容姿は問わない。残忍な暴君キャラなら理想的だ。  それが、おれとモリの共通認識だ。  ここ、ふた月あまり出会い系サイトを利用して男漁りに励んできたけれど、モリは必ず一緒にホテルに入る。そう、オブザーバー然と、おれがいたぶられる場面に立ち会う。  むらむらすることがあっても、決してプレイに加わることはない。ちなみに、もちろんエンコーや3Pが目的ではありません、念のため。   皆勤賞ものに、つまみ食いにいそしむのは異常かな? 少なくとも小児性愛者(ペドフィリア)に較べれば、かわいいものだと思うけれど。  ところで、おれもモリも一歩表に出れば平凡な大学生に戻る。この春、三年に進級した大学生らしく一番の関心事は就活問題だ。  大学に入学した二年前の春。同じサークルに勧誘されたのが縁で知り合ったばかりのころは、杜野さん、木崎、と呼び合っていた。  杜野先輩、とふざけて呼ぶこともあった。モリは一浪していて、ひとつ年上だからだ。  長きにわたる片思いの期間を経て、一緒に初詣にいった今年の正月に告られて、晴れて恋人に昇格した。  ただし、両思いになってめでたし、めでたしとはいかなかった。  だいたい、最後までしたことがないし。  これは断じて負け惜しみじゃない。肉体関係のあるなしは、愛情の深さを測るものさしじゃないんだ。セックスレスでもラブラブな夫婦はごまんといるのが、好例だ。  ともあれ、ふたりとも健康体であるにもかかわらず、おままごとのように節度を保った交際をつづけているのには理由(わけ)がある。

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