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第10話
草食系男子が台頭した例もあるとおり、日本人は一週間あたりのセックスの回数が先進国の中で断トツに少ないという話だ。
でも、最近の男性週刊誌は〝死ぬまでSEX〟特集の花盛り。このサイトにしても、今すぐヤりたいと顔に書いてある男、男、男の画像が金太郎飴のように並んでいて壮観だ。
「ネットが普及する前は、サウナとかポルノ映画館とかが出会いのメッカだったらしいね。現在 は秘境に住んでいてもクリックひとつで相手はよりどりみどりなんだから、便利な時代だよね」
「カイトにとっては、もってこいだろう」
モリは、いつになく突っ慳貪に答えた。そしてベッドに寄りかかると、TOEICの問題集を広げた。
読書用の眼鏡を押し上げる指づかいが、時たま乳首に触れてくるときのそれにダブってどぎまぎした。灰皿を洗いに行くふりで台所に逃れるついでに、いちばん長い吸殻をつまみあげた。
キスをせがんでも、気分じゃないと、つれなくされる可能性大。なのでシケモクをふかして、間接キスだとにやける。いじらしいという次元を通り越して、我ながらキモいったら。
病んでいるというのは、こういう行為を指していうのだよ、柴田クン。
パソコンの前に戻ってきて、
「こいつ、よさげじゃない? 『スパンキング百連発で腫れあがった尻にぶち込まれたいネコを求む』──だって。今度こそ正真正銘のドSで、ハードにいじめてくれるかもよ。連絡とってみよっか」
早速メッセージを綴りはじめたとたん、横合いから手が伸びてきてサイトが閉じられた。それとともに空気の質が変わった気がした。
憎悪の念や、それに類する負の感情を主成分とするまがまがしいものへ、と。
眼帯のせいで遠近感が狂いがちなせいだろうか。のっぺらぼうのように表情を失った顔の中で、双眸だけが異様にぎらついて見えた。
蒸し蒸しする夜にもかかわらず、急に奥歯がカチカチ鳴り出すほど寒気がした。
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