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第14話

 たとえ艶っぽい声が事あるごとに耳の奥でこだまするにしても、そのことでカイトをいびるほど落ちぶれちゃいない。  寝取られの面白みを追究する方向に意識の改革を図ったのは、我ながら名案だ。  カイトはカイトで、俺公認でオトコをとっかえひっかえする状況を謳歌している。カイトは、いつも俺の目を意識してよがり狂う。  それって、俺が間接的にあいつを抱いていることだよな。  と、カイトがカットソーの衿ぐりを広げて胸元に息を吹きかけた。 「ひりひりする。いきなりバイオレンスなキャラに変身するから、びっくりした」 「ナチュラルに、ごめん」  この通り、と片手で拝むそばから、もう片方の乳首を思いきりひっぱった。口をとがらせたわりには瞳は潤みはじめていて、試しに股間に触れてみると、すでに萌していた。  下半身を裸に剝き、玄関のドアへと顎をしゃくった。カイトは胸をドアにくっつける形に沓脱ぎに立ち、肩越しに振り返った。  ドアを隔てた向こう側は開放廊下だ。  隣人が気まぐれを起こしてドアスコープからこの部屋を覗き込まないとも限らないシチュエーションに興奮するらしくて、頬が桜色に染まっていく。  見せてみろ、と命じると、カイトはもつれがちな足を肩幅に開いた。そしてこころもち腰を突き出すと、なまめかしい手つきで尻たぶを割り広げた。  そこは、かなりの本数を銜えこんだのが信じられないほど慎ましやかだ。ギャザーはきれいにたたまれていて、それでいて人体の神秘だ。  伸縮性に富んだここは、時として腕さえがっつく。  羞じらうように誘いかけるように、細腰(さいよう)が揺らめく。シカトしておいて煙草を咥えると、カイトは目いっぱい尻っぺたを広げた。  ぱっちりした右目と、ルビーをはめ込んだように充血している左目とのアンバランスさが淫靡で、どくんとペニスが脈打った。 「ひとりエッチは後ろ専門なんだろう? 後学のために実演してもらおうか」  ジェルを放り投げてやった。ギャザーを解き伸ばして指を沈めるさまは、慣れたものだ。  エロい面も含めて、可愛い俺の恋人。だが、その従順さに愛しさと同等の憎しみをかき立てられて、危うくまたキレそうになった。  世間一般の常識に照らし合わせれば、俺たちは変態の部類に入る。  しかし幸せの種類は人の数だけあって、十把(じっぱ)ひとからげにカテゴライズされるのは心外だ。

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