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第18話
仮にカイトが、ふしだらな生活を悔い改めて修道院に入る、とでも言い出したときは。
がばがばになるまで後ろを可愛がって妨害してやる。
もっともカイトにしてみれば、アヌスの一点にしか存在価値がないように扱われるのは願ったり叶ったりなのかもしれないが。
純情だったのが、いっぱしのセックスマシンに変貌か。イラっときて揺り起こすと、カイトは俺を認めてあどけなく笑みくずれた。
朝勃ちしたのをヌいた痕が、頬にこびりついたっきりの顔で。
「おかえり。傘を大学に忘れてきたの? 髪の毛がびしょ濡れだ」
カイトに早く会いたい一心で、傘もささずに走って帰ってきた。そんな真実 のところは、口が裂けても白状するものか。
ただいま、と言う代わりに鎖骨の上を嚙んで返した。血がにじむくらい強めに。
「キスマークの過激なバージョンだね。愛されてるっぽくて、うれしい」
「……目薬を買ってきた。さしてやる」
左目は相変わらず赤い。ちくり、と胸が痛む一方でにやにやしてしまう。俺の精液で炎症を起こしたということは、これも愛の証といえるからだ。
ただキスマークにしても歯形にしても、カイトは売約ずみだ、とアピールするものではあるのだが、泡雪のように儚く消えやすいのが難点だ。
「飲まず食わずで、はらペコだよな」
目薬が垂れた目尻をぬぐってやると、折りしも腹が盛大に鳴った。
カイトは顔を赤らめてうつむき、これを潮にロープをほどくべきなのだろうが、縛られていると婀娜 っぽさが際立つ。ゆえに、当面はこのままにしておこう。
チャーハンをこしらえた。雛に口移しで餌を与える親鳥さながら、ひと匙、ひと匙口に運ぶ。
本来はこんなふうに甘々の雰囲気が漂うのが当たり前の恋人同士であったはずなのに、現実は真逆だ。無邪気に舌鼓を打たれると、逆に神経がささくれ立ち、嘔吐 くまでスプーンをねじ込んでしまう。
そういえば、ものの本によると遊女は〝○○命〟と墨を入れて情夫 に心中立てをしたとかなんとか。
それの現代版というか、カレシ、カノジョの名前をコンパスの針か何かで腕に彫るのが前世紀のヤンキーの間で流行ったらしい。
簡易型のタトゥーだが、新しい恋人ができればもめ事の種になるのは必至。浅はかで、いかにもおツムのできが猿並みの連中らしい。
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