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第19話

 だが、俺とカイトの場合は運命共同体だ。だったら、(つい)をなす印を肌に刻むのもだな。  尾骶骨の上でくくってある腕を掬い上げて、肘の内側をさする。色はマリンブルーがいいな。この白くてきめ細かな肌にさぞかし映えるだろう。  試しに自分の躰で練習してみるか。  カイトと一緒なら、肥溜めですら天国だ。俺の愛は永久不変だ、と宣言するからにはド派手なものを彫るべきだ。  K・K、とカイトのイニシャルを二の腕にボールペンで書いた。さっそくカッターナイフで下書きを線をなぞっていけば、早くカイトに見せたいと気が急いているせいだな。  ところどころ深く切りすぎて、鮮血が稲妻のような模様を描いた。 「なに、やってるの。気でも狂ったの」  手首がすりむけるのもかまわず、カイトがロープを引きちぎった。カッターナイフを奪い取りにくるのを肘で突きのけておいて、なおも刃を走らせる。  仕上げに万年筆のインクをすり込めば、簡易タトゥーの完成だ。  うん、なかなかの出来栄えだ。色素が沈殿すれば半永久的に保つだろう。  腕を天井灯にかざした。スポットライトを浴びたように、K・Kが燦然と輝いた。 「別れてくれ、と土下座して頼んでも一生、離してやらないからな。覚悟しておけ」  カイトは大きくうなずいた。その間も熱っぽい視線はK・Kにそそがれっぱなしだ。 「ついては、おまえに俺のイニシャルを彫る。異論はあるか」 「ないよ、ないに決まってる」 「くっつくな、暑っ苦しい」    ぎゅうぎゅうとしがみついてこられて、バランスを崩した。尻餅をつき、そこにカイトが抱きついてきたものだから、もつれ合って床に転がった。  さらに顔じゅうにキスの雨が触れば、バカップル丸出しだ。  俺は、ため息をついた。それでも、たまには標準モードでイチャついてもバチは当たらないだろう。だいたい俺のカイトへの接し方じたい、ツンデレを地でいっているしな。 「モリ……好きだよ、大好きだ」  腹に跨ってこられた拍子にTシャツがめくれた。カイトがのめるにつれて、ふぐりが鳩尾を掃き下ろしていく形になれば眉根が寄る。

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