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第45話

 周の情報によれば、凌征会の会長、三村征司を匿っているのは、江ファミリーの下っ端らしい。まぁ、田山組との麻薬取引を潰したネタはあっても、取引相手は江ファミリーとは別のマカオの連中だから、むしろありがたい.....というところだろう。やつらの株が下がって江ファミリーが崔伯嶺により重宝されれば、しめたものだからな.....。裏社会の実情なんてのはそんなものだ。 ーターゲットは、夜、下町のパブに現れる。江ファミリーのガードはふたりだー  周からの入電のあと、俺はシャワーを浴び、『戦闘服」を着る。いつ見ても扇情的過ぎて目眩がするが、色仕掛けもテクニックのうちだ。  俺は小包を開き、PSS-2を組み立てる。部品に異常はない。が、今回はこいつは護身用だ。 ー銃器は出来るだけ使わないーのが、今回のプランのモットーだ。 「一杯、いただいてもいい?」  周の情報どおり、凌征会の頭、三村征司は、場末のパブの片隅で老酒をあおっていた。画像で確認してはいたが、カマキリのような尖った顔の頬が一段と痩せて顔色がおそろしく悪いのは、逃亡生活でロクに眠っていないからだろう。  三村は俺を見て、一瞬目を見張ったが、直ぐに目を細めてニヤっと笑った。 「いいぜ、老酒でいいか?他のモンのほうがいいか?坊や」 「やだなぁ、バレてるの?」  俺は出来るだけ色っぽく上目遣いで、カマキリ男を見た。 「生憎、俺はお前に良く似たガキを知ってる。もっとナヨナヨしてたがな......仕込めばいい男娼になったんだが。せっかく輪姦させて男の味を覚え込ませたのによ......ビルから飛んじまった」 「死んじゃったの?」  わざとらしく驚いたふりをすると大袈裟に手を振って言った。 「運良くというか運悪くというか、ロシアンマフィアの怖い旦那に拾われちまってな.....ほとぼりが醒めたら取り返しに行かないとな.....大事な商品だからな」 「取り返せるの?」 ーまずは無理だろう。そのガキの身体はお前の目の前にある。けれどお前はそのガキに消されるんだからな.....ー  俺は心の中で呟いた。が、次の言葉はなお俺を不快にさせた。 「取り返せるさ。邪魔者を消させてやったんだからな?」 「邪魔者?」 「ラウルってぇ、この香港のマフィアの若頭がいてな。そのロシアンマフィアの旦那に目ぇつけられて日本に逃げてきたのを俺が探し出して誘き出してやったんだ。.....まぁ殺るのは自分で殺るって言ってたから、相当憎かったんだろうな.....」 ーそうだろうな.....。あっさり殺さずにてめぇのモンで犯りまくって、てめぇの飼い犬にしやがったー  俺は腹の中でふつふつと沸き上がるものを抑えて、わざと眉をひそめて囁いた。 「そんな話していいの?周りに聞こえたらヤバくない?」 「大丈夫だ。こいつらには日本語はわからねぇ....。そぉいや、なんでお前、日本語が話せるんだ?」 ー今さらかよ.....ー  俺はとぼけて、科を作って言った。 「僕には日本人の上客が多いから....」 「お前、やっぱり男娼か...」 「そうだよ。でも、あんたにはその趣味はなさそうだね?」  カマキリ男は、スケベたらしい笑みを浮かべてにじり寄ってきた。 「そんなことはねぇぜ....俺ぁ、男女は問わねぇ。あんたみたいに色っぽい生きのいいのが好みなんだが、.....生憎と銭が無い」 「タダ.....でもいいよ」  俺はウインクとやらをしてみる。 「本当か?」  カマキリ男は、訝しげに目を細める。 「金払いはいいんだけど下衆い客がいてさ.....口直ししたいんだ」 「口直しねぇ.....」 「ダメ?」  駄目押しに上目遣いで見上げて、唇を舐めてみせる。 「いいぜ.....来な」  カマキリ男は、にやけた顔で斜め後ろの男に話しかけた。 ーちょっと楽しんでくる。追いてくんなよー  かかった。俺はにっこり笑って立ち上がった男の腕に絡みついた。真剣に吐きそうだった。  

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