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第48話

 俺達は、海南島から何の問題もなく自家用ジェットでロシアに戻った。ミハイルが『催はまだ動かない』と言ったのは正確だったかもしれない。日本のたかが小規模な組織が壊滅したところで催のシンジケートには痛くも痒くも無いし、香港には中国当局の手が入りすぎて、いささかやりにくくなっているのは確かだ。  人民政府と反社会勢力が反りが合わないのは、統一国家に対する人民政府の拘りだろう。人民政府にとっては、香港の『自由』は受け入れがたいのだ。まぁ、それはいい。それはいいが、問題は帰った途端に、ミハイルが、 『他の男にジャレつくような悪い子にはお仕置きをしないとな.....』 と言い出したのだ。    連日、気を失うまで抱き潰され、俺は物の例えではなく、真剣に悲鳴を上げた。 「何だよ。色仕掛けのやり方も覚えろって言ったのは、あんたじゃないか...!」  ミハイルはニヤリと笑って言った。 「覚えろ、と言っただけで、使っていいとは言っていない」 「詭弁だろう、それは...!」  反論する俺を難なく捩じ伏せて、ヤツは俺の上にのしかかった。 「可愛いよ、パピィ。とても愛らしい」  ヤツの手が俺の勃ち上がり始めたモノを掌に握り込み、もう一方の手で俺の後孔の縁を触れるか触れないかくらいのソフトさでなぞった。 「もぅこんなに欲しがって......イヤらしい子だ」  ヤツの指が俺の肌に触れている....そう思っただけで、全身がカッと熱くなり、ひくひくと内奥が蠢いた。 「あんたが......そうしたんじゃないか」  俺は恥ずかしさと胸の奥から沸き上がる甘いような切ないような疼きに眼を潤ませて、ミハイルを睨んだ。 「そうだ。だが、他の男にまでそんな可愛い顔を見せてはいけない。......お前は私だけの雌犬。私だけの可愛いパピィなのだから、な」  ヤツは俺の頬を撫で、優し気なふうに囁いた。が、その顔には悪い笑みが浮かんでいた。 「あんっ.....んっ.....やだっ.....あぁんっ.....」  ヤツは唐突に俺の身体を仰向け、深く折り曲げさせると、ヤツの目の前に晒されたそこに舌を捩じ込んだのだ。熱く熱をおび始めた肉壁をねっとりと舐めまわされ、尖らせた先端で敏感な部分を突つかれて、俺は恥ずかしさと呼び起こされる快感とに身を捩り、咽び泣いた。 「やめ.......あひっ!......ひんっ.....い、いや...」  イヤイヤと首を振りながら、目の前で弾ける光と背骨を駆け登る焔に俺はもう限界だった。 「挿れて....もう......早......く....」  手を伸ばしてヤツの金色のたてがみを掻き抱き哀願する俺に、ヤツは頭を起こして口許を歪ませた。そして、冷たく囁いた。 「ダメだ」  ヤツは俺の脚を降ろし、俺を横抱きにすると、達してしまった俺のモノを指先で弾くようにして意地悪く、笑った。ゆっくりと物欲しげにひくつく肉の合わいに指を潜り込ませ、敏感な部分の周囲を擦り立て、時に思い出したようにそこを掠めて引っ掻く。  焦らされるやるせなさに身を揉んで逃れようとしても、がっちりと腕と脚で押さえ込まれて身動ぐことしかできない。 「やぁ....あっ!.....あぁっ....やめ...あぁんっ.....」  内臓をチリチリと焦がすような刺激とはぐらかされる切なさで気が変になりそうだった。 「なん.....で、そんなに....虐める.....んだよっ! .....俺は.....そんな.....に..悪.....い.....こと、した......か?」  はしたなく淫らに喘ぎながら、上目遣いで睨む俺に、ヤツは小さく笑った。 「したさ。.......約束を守らない悪い子は、お仕置きされるんだ。そうだろう?パピィ....」  ヤツは掠れた声で俺の耳許で恨めしげに囁き、そうして俺の腰を高々と抱え上げると一気に指し貫いた。 「ひあぁっ.....あっ.....あぁっ.....あぁああぁっ!」  情け容赦なく激しく突き上げられ、抉られて喘ぎ啜り泣く俺の背中越しにヤツがポソリと呟いた。 「待っていたのに......」 ーえっ?......ー  俺がふと首を巡らせると、ヤツが泣きそうな目で俺を見つめていた。ヤツは俺を絶頂に追い上げ、自分もまた俺の中にしたたかに白濁を放ちながら、ひそと思い詰めたように囁いた。 「エルミタージュに行こう、一緒に......」  俺は遠退く意識の中で、懐かしい横顔をふと思い出した。彼は、俺がロシアを離れることを告げたとき、一言、そう言った。  そして.........。      

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