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刻と壮吾の繋がり 3

「腹が減っては戦はできぬ、だろ。俺は全てを聞く準備ができてる。話の続きを聞かせてくれ」  壮吾は、刻の正面に座った。スッと流し目を送られる。 「了解した。島ノ江、始めてくれ」 「かしこまりました、刻様」    島ノ江は主人に一礼し、居直ると壮吾と視線を合わせた。 「亡くなられた春井様の御祖母様、千代様は、強力な霊能力をお持ちのようでした。そもそも、刀禰(とね)様の弟子になられたのは、あらゆる霊体験の相談を刀禰(とね)様に依頼したことがきっかけだったようです」 「ばあちゃんは元々、見える体質だったのか……」 「はい。霊能力が強いために、通常、人には見えないものが見えてしまう。やっかいなのは、その力を頼って霊が集まることです。恐らく千代様はそのような状態だったのではと推測できます」 「そっか、だからそれならいっそのこと、能力をコントロールできるように修行することにしたってことかな」 「はい。刀禰様が提案されたのかもしれません。特に、千代様の周囲に集まる霊の半数は生霊だったようなので、なおさら修行が必要だったのではないかと」  壮吾は、引っかかりを感じた。 「生霊?」 「千代様は、大変聡明で美しい女性でしたから、求婚する男性が絶えなかったようです。諦めきれない男性達が、今で言うストーカーから生霊へ姿を変えたのでしょう」  隣の刻が、一枚の写真を寄越した。 「一枚だけ残っていたらしい。きみのお祖母さんだ」  壮吾は、セピア色の古ぼけた写真を受け取った。 「この人が、千代ばあちゃん……」  季節は夏だろうか。  白黒だから色は不明だが、白っぽい半袖のワンピースを着た少女が、カメラ目線で微笑んでいる。    腰の上まで伸びた長い髪に切れ長の瞳。華奢でとても美しい印象だ。壮吾は、写真の表面をそっと指先で撫でた。    ――あれ?  祖母の姿は初めて見たはずなのに、既視感がよぎった。不思議と、懐かしさに似た感情がぐっと込み上げてくる。 「春井くん、きみに、とてもよく似ていると思わないか」 「俺に?」  だから懐かしく感じたのだろうか。けれど壮吾は、この美しい少女と自分が似ているとは、とても思えなかった。 「うーん、確かに顔立ちとか雰囲気は似てるような気がするけど、俺はこんなに華やかじゃないし」 「春井くんと千代さんが似ているのは容姿だけじゃないよ」  刻が言った。 「え?」 「きみの部屋に現れた黒い影。あれは生霊だ」 「生霊? 悪霊じゃなくて?」  刻は頷き、島ノ江に目で合図する。それを受けて再び島ノ江が説明を始めた。 「言葉通り、生霊とは生きた人間で、亡くなった人間が霊体として現れたものではありません。千代様の強い霊能力と男性を惑わせてしまう魔性の目。その魔性の目が、一代を隔て春井様に受け継がれたのでしょう」

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