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刻と壮吾の繋がり 7

「久須美は俺を守ってくれていたのか。何年も……」 「そうだよ、きみには真意を告げない約束でね。僕と千代さんは持ちつ持たれつの関係だった。ただ、千代さんはきみの傍を半径百メートル以上離れられないから、春井くんに現場に同行してもらうしかなかった。きみを誘う理由が、それだ] 「でも俺の都合で断ることもあったよな」 「その時は……まあ、解決は五分五分になるがね」 「そっか……そういうことだったんだな」  高校時代、友人の恋人だった生意気な下級生として刻に出逢った。そりゃ最初はただの知人だったけれど、あれから十年近く一緒にいる。  しかしそれは、亡き祖母と刻の契約のもとに実現したことだったのか。  少なくとも、壮吾は刻が友情を感じてくれていると思っていたのに。  千代の存在で胸は温かいのに、直後、外に放り出されたような、足元が頼りない心地になる。     ――久須美にとって、俺と一緒にいるのは仕事の一環、だったのか……    その事実を知ってぼんやりしてしまい、刻に怪訝な顔をされた。  壮吾は、正面に座る美しい男を盗み見た。  やんごとなき家柄で、本来住む世界の違う男。当然思考も何もかもが、凡人の壮吾とはかけ離れている。  でも、一緒にいるうち、自分の中で友情が恋情に変化してしまった。 「春井くん、大丈夫かい。きみの脳みそのキャパシティを超えてしまったかな」 「超えてねーよ」  うまく突っ込み返せたが、いまいち勢いがないのはバレてるはずだ。 「まあ、でも無理もない。いくら健康で身体が丈夫なきみでも、日々肉体的な負担は大きい。そもそも、傍に千代さんがいなければ、きみの魂は疾うにあちらの世界に引っ張り込まれていたことだろう」 「えっ! ……マジで? そうなの……?」  刻の顔は真顔だし、島ノ江も同様だった。背中がぞくりとした。遅れて震えもくる。 「安心するといい、きみには千代さんがついてる。……もちろん、僕もね」  刻が柔らかい視線を寄越した。なのに、次には胸が痛くなる。  刻にとって、自分の存在はいったいなんだろう。    壮吾の胸は、鈍い痛みを訴えるのだった。

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