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沈められた想い 4

「久須美から外出禁止って言われてるからね。お屋敷の中ならいいかと思って、ブラブラしてたところだよ」    壮吾の言葉にクスッと微笑むと、若梅はひょいと籠を脇に置き、窓の外を眺めていた壮吾の隣へ立った。 「敷地を囲む塀から結界を張っていますけれど、屋敷内の方がより安全です」 「あ、やっぱり? そうなのかなって思ってた」  さすが久須美家のメイドだ。壮吾に関する事情を知り得ているらしい。 「あのさ、君もやっぱりその、霊感みたいなの、あるの?」  大きな瞳をくるんと動かし、若梅は窓の外を見る。 「はい、邪悪なものを察知する程度です。他にも少々……微々たる能力ですが、刻様に役立てていただいています」  その視線の先を追って、壮吾も外を見た。  伊達眼鏡をかけてはいるが、裸眼で五十メートルほど先の巨大な門の模様までよく見える。彼女はそのあたりを見ているようだった。 「今のところは、大丈夫そう?」 「はい。でも油断は禁物です」 「うん。……久須美にも耳にタコができるほど言われたよ」  ふふっと互いに微笑み合う。  壮吾は若梅の可愛らしい笑顔に癒やされるのを感じる。そして、さっきの真っ赤になっている表情も思い出した。 「ほんとに、若梅さんは久須美が大好きなんだね。……あ、てゆーか、島ノ江さんもそうだけど」  一瞬驚いた若梅は、 「はい、もちろんです。私達にとって刻様は最高のご主人様ですもの」 「はは、そうだよね。わかるよ」  ふいに若梅の顔が真剣になった。 「あの……春井様にとって、刻様はどのような存在ですか?」 「え、俺?」 「はい」  食い入るように見つめられ、壮吾は無意識にのけぞる。 「久須美は俺にとって……」 「はい」  意外にぐいぐい来るんだなあ、若梅さんて。と思いつつ、彼女がどんな答えを期待してるのか不明だが、まさか「絶賛片思い中だよ♪」とは言えないので、無難な答えを探す。  壮吾は、なぜか目をキラキラさせている若梅に言った。 「久須美とは腐れ縁だけど、俺にとっては大切な友人だよ」  壮吾がそう答えても、若梅はじっと壮吾の目を探るように見ている。 「あの……若梅さん?」 「春井様も、霊能力がおありなんですよね」 「ああ……そうみたいだね。自分ではないと思ってたんだけど」 「そうなんですね……でもまだ、大きな力が隠れているかもしれませんよ……うーん、能力が邪魔してよく見えない……」  若梅は壮吾の目を覗き込みながら、なにやらブツブツ言っている。  壮吾は平気だが、普通の男はこんなに可愛い女の子に近づかれたら、勘違いするのではなかろうか。彼女の遠慮ない態度に驚きつつ、後ずさる。

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