67 / 102

俺の愛しの探偵 2

「あっ、あっ、やっ、そこ、だめ……だ」   余裕がないと刻が言った通り、すぐに指は増やされた。長い指を回転させながら、壮吾の中を広げていく。 「ま、まって……や、やぁ」  何度も抱かれているのに、この瞬間だけは毎回腰が引けてしまう。  快楽の海に投げ出されるのが怖かった。想いを隠していたからこその恐怖だったのだ。 「……待てない。言ったはずだよ、余裕がないんだ。ギリギリで堪えてるからね。……僕も、こんなに今にも暴発しそうな状態は覚えがない」  刻は額から汗を流し、呼吸が荒い。普段は色味のない秀麗な顔に赤みが差し、壮絶な色気を放っている。  以前、ただの友人だった頃、普段は淡泊そうに見えるこの男が、どんな風に女を抱くのか興味があった。しかし実際情事を重ねる関係になり、性に関しては情熱的で貪欲な男だと知った。  まさに今、刻は壮吾の肉体を情熱的に貪っている。  ――もう、隠さなくていいんだ  壮吾の中も急速に熱さを増し、熱くて重くて、油断するととてつもなく大きな声が出てしまいそうだ。 「熱いよ、君の中……早く……君の中に入りたい」  刻の指が弱い部分に触れるたび、壮吾の身体がびくびく跳ねる。 「あっ、久須美……あっ、ぁあっ」  刻の髪が腹部を撫でた後、放っとかれていた壮吾の張り詰めた中心に、刻の口がぬるりとかぶりついた。 「あっ、ア――ッ」  壮吾は更なる強烈な快感に大きくのけ反った。 「やっ、あ、あっ」  キスと同様、口腔での愛撫も初めて、壮吾が刻にしたこともないのだ。びっくりして、己の下半身に顔を埋める刻を凝視する。  常に笑みを湛える、形の良い上品な唇がペニスを出し入れする様は淫猥すぎて目の毒で、どうにかなってしまいそうだった。    しかし同時進行で刻の左指は本数を増やし、壮吾の中を掻き回す動きも止めないから、思考はすぐに官能に溺れてしまう。 「やっ、あ、あっ」    感じすぎて頭が変になりそうで、涙がぼろぼろ零れた。 「あ、んっ、だめっ……だめになる、から……あっ、久須美ぃ」 「良すぎて辛いかい? じゃあ、一度楽にしてあげる」  鈴口を強めに刺激されると、追い立てられるように壮吾は極まる。 「は、あっ、あっあぁ――……」  身体を仰け反らし、ぶるぶる震わせながら放った。  前と後ろ両方の刺激が相乗効果となったのか、淫水はいつまでも吹きだし続けた。壮吾の腹部が痙攣し、それすらも刺激になる。 「あ、あ、あっ、なん、で……あぁ……」 「すごい、熱いミルクが止まらないよ。なんて淫らでいやらしいんだ、今夜の春井くんは」  興奮した声の刻の指が、壮吾の弱い部分を探り当て責め立てた。 「はあぁ、ん、んっ、あっ、あん」 「過去に抱いた誰よりも、君は綺麗で可愛くて、いやらしいよ」 「だ、誰かと、比べる、な」 「そうだね……ごめん」  瞼を開けて見上げると、自分だけを見つめる刻がいた。愛しさに胸が潰れそうになる。 「好きだよ、久須美。……ずっと前から、おまえが」  涙が目に沁みるのを堪え、壮吾は真っ直ぐに気持ちを告げた。 「俺も……愛してる」  刻の瞳に微かな驚きが浮かぶ。そして次には、見とれるほどの美しい笑顔になった。 「……こんなにも嬉しいものなんだね。心から好きな相手に、好きだと、愛してると言ってもらえるのは」  これまで多くの女性達との恋愛を謳歌した刻のことだ。愛の言葉など飽きるほど囁かれてきたことだろう。 「俺だって、嬉し過ぎて……死にそう」 「死ぬのは八十年後にしてくれたまえ」   

ともだちにシェアしよう!