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俺の愛しの探偵 5
「そんなの……俺だって、そうだし……」
「春井くん、本当か?」
猛烈に照れくさくて、壮吾はバスタオルで顔を隠した。刻は何も言わず、背後からギュッと壮吾を抱き締めた。
はーっと刻が溜息をつく。
「幸せだ、僕は」
「……俺も」
何年も悪友関係でセフレだった男とのラブラブな空気が照れくさくて恥ずかしいけれど(慣れる日が来る気がしないけど)、壮吾は勇気を出してぷはっとタオルから顔を出す。
「春井く……」
振り向いて刻の唇を軽く塞いだ。チュッと音を立てて離れると、離れるのが惜しいとばかりに再び口づけられる。可愛らしいバードキスの応酬に、胸一杯温かな幸せで満たされる。
「すごいね、若梅さんて」
「ああ、彼女の持つ不思議な能力だ」
「さっすが。ミラクルハウス久須美家」
「……なんだ、その妙ちくりんなネーミングは」
言いながら、別段気を悪くする風でもなく、刻はふわふわのタオルで壮悟の濡れた髪を優しく拭く。普段は世話をされる立場だから、単に好奇心なのかもしれないが、刻の世話好きな一面を垣間見た気がする。
「島ノ江の企みは、千代さんも一枚噛んでいたんだろうな」
「えっ、……あ、バックボーンって」
「恐らく、千代さんのことだ」
なるほど。千代がついてるから、島ノ江はあそこまで大胆に壮吾を追い詰めることができたのか。
「そっかあ……千代ちゃん、本当に俺を護ってくれたんだな。俺が幸せな姿、見せたかったなあ」
光の中で、壮吾は祖母の姿を見た。自分より年下の女の子だが、優しく包み込むような笑顔だった。
「千代ちゃんは、成仏できたのかな……」
「彼女なら、そこにいるよ」
壮吾の手の甲に口づけながら、刻がさらりと言った。
「……は? おい、シャレにならない悪い冗談はやめてくれよ。千代ちゃんは俺を助けるために黒い影と一緒に消えたじゃないか」
「あの時は巨大に膨れ上がった邪気を吹き飛ばした衝撃で、千代さんも飛ばされただけだよ。でも心配は無用だ。彼女はレディだから、僕らが愛し合っているときは消えていてくれたよ」
「消えてって……嘘だろ」
じゃあ、ベッドの上で刻とラブラブなこの状態を、祖母に見られているということか。
「わあ――! 見ないで千代ちゃん! 見ちゃいけません!」
壮吾は刻の腕の中からばっと逃れ、シーツの中へ潜り込む。
「……春井くん、かくれんぼかい?」
「ちがーう! おまえからも千代ちゃんに言ってくれよ、久須美と二人のときは消えてて欲しいって!」
ついさっき、いちゃつくのは二人きりのときにしてくれと言ったばかりだ。けれど、祖母が見ている前でとてもそんな気になれない。
「そんなに照れなくてもいいじゃないか、千代さんはニコニコして嬉しそうだよ」
「ほんとに? 千代ちゃんが……」
すぽっとシーツから顔を出した壮吾の唇に、狙ったように刻がキスをする。慌てて口を押さえた壮吾の髪を優しくすきながら、刻は見とれるような笑顔を見せる。
「たとえ、僕と君が睦み合っているのを千代さんに見られたとしても、愛し合う者同士の、愛ある神聖な行為なんだから、何の問題もないよ」
刻は、にっこり微笑んだ。それはそれは、綺麗な笑顔だ。
壮吾は顔を真っ赤にさせ、ぷるぷる震えた。
「そんなわけあるか――!」
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