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刀禰との面会 11
壮吾が身体を起こすと、刻が手を貸して支えてくれた。
マットレスがふかふかすぎて、しかも身体に力が入らなくてモタモタしていたら、刻がてきぱきとクッションを二個壮吾の背中に差込んでくれた。
「サンキュ、はは、おまえって結構世話好きだよな。今まで知らなかったけど」
「そんなの、君にだけだ」
刻も壮吾の隣に来てベッドに腰掛けたので、壮吾はその肩に凭れ掛けた。
「千代ちゃんの声、鈴の音のような可愛らしい声だった。聞けて良かったよ。俺の事、そうちゃんて呼んでた」
「うん」
「おまえにも、会いたかったよ」
まだ半分眠っているような状態だからこそ、普段なら恥ずかしくて言えないようなセリフも言える。
「今は毎日顔を合わせてるのにな。凄く久須美に会いたくてしかたがなかった」
「春井くん……」
――あなたに言われるまでもない、僕が一生かけて世界一幸せにしてみせますよ――
千代にそう宣言してくれた刻に、愛しさがつのる。泣きたいほど嬉しかった。
「春井くん、少しだけ、いいかい」
ん? と顔を上げると、肩をきゅっと引寄せられた。
刻のしなやかな指が壮吾の顎をすくい上げ、目を閉じるのと同時に、口付けられた。
「ん……」
優しく唇を吸い上げられ、背中が粟立った。
優しく与えられるキスも好きだが、それだけでは足りないと思ってしまう。
「は……」
「口を開けて」
返事の変わりに唇を開くと、熱い舌が差し込まれる。壮吾は喜んで迎え入れた。
この場所で羽目を外してはだめだという理性も働くが、すぐに夢中になってしまう。刻がほしいという飢餓感が勝っていた。
しばらくの間二人は、島ノ江がドアをノックするまで、深い口付けに没頭した。
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