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刻の意外な一面 7

 この熱い楔を後ろに迎い挿れ、浅く深く何度突かれただろうか。  壮吾が一番感じるのは深い場所で、そこをゆるく激しく突かれると、四肢が溶けてなくなりそうなほど気持ちがよかった。  そのときの体感を思い出し、下腹部がじんと熱くなってくる。舌を這わせるたび、刻の硬芯は壮吾の眼前でゆるゆると頭を擡げ、その存在を壮吾に対して誇示し始めた。 「――すげえ、元気になってきた」 「だめだ、春井くん」  顔を覆い隠すように手の平を当てる刻の姿とは反対に、こちらは素直なようだ。 「なんだか、もっと可愛がって欲しそうだぞ」 「すまない……君がそんな風に、刺激を与えるから……」 「だから謝るなって」  恥ずかしそうに唸る刻の珍しい姿も堪能したいけれど、壮吾は引寄せられるように、天を仰ぎ震える刻の硬芯を、唇で挟み込むように上下に動かした。 「んっ……」  初めてだからヘタクソに決まっている。けれど、刻は表情は恍惚として気持ちがよさそうだ。  先端からとろりと透明の液体が滴る。    それが美味しそうに見えて、ぱくりと口に含んだ。しかし、全部は口腔に収めることが出来ない。  粘ついた塩分を感じた。それが刻の味なのだと思うと、愛おしさが湧き上がってくる。 「くっ……はる、い、くん」 「ん……」  すごい、どんどん熱く硬くなっていく。  刻を口に含んだまま顎を上下に動かし、耳からは刻の気持ちのよさそうな声が聞こえ、気付けば壮吾の下腹部もすっかり形を変えていた。  これを、俺の中に挿れたい。  壮吾は衝動的に左手を後ろに回した。自身の指で、刻を受け入れるための準備をする。  湯の中にいたおかげで、普段閉じているその入り口は、壮吾の指を難なく飲み込んだ。中が柔らかいような気がする。思えば自ら指を入れるのは初めてだった。 「ん……ふ、ぅ」  ずいぶん前、里親の下から独立してしばらく経った頃、深夜に高熱を出したことがあった。そのとき、自分で熱さましの座薬を入れた経験はある。状況はまったく違うが、ふとそのことを思い出した。  あのときは熱に浮かされて、何の感覚もなかった。なのに、数年後の自分は愛する男の漲りを咥えながら、同じ場所を指で広げているなんて。  口腔の刻の硬芯は、火傷しそうなほど熱い。    見上げると、刻の胸は激しく上下していた。  それを目視で確認した壮吾自身も、かなり張り詰めてきていた。  早く、欲しい。  無意識に指を増やしていたらしい。  壮吾の指は、じゃんけんのチョキをすぼめた形で、抜き差しをしていた。  熱に浮かされているのは、今も同じか。  三本目も難なく飲み込んだ壮吾の後腔は、刻の楔を欲して切なげにうねり始めた。  湯から立ち上がった壮吾を、くらりと軽い眩暈が襲うが、かまわず刻の腕を引っ張り刻を立ち上がらせた。 「春井くん?」 「早く……挿れてくれ」  豪奢なデザインの浴室の突起に手を固定し、壮吾は刻に向かって腰を突き出した。真っ直ぐ立つのに苦労するほど、壮吾の後腔は刻を欲してひくついている。 「でも、春井くん」  刻の息も荒い。壮吾の息も切れ切れだった。 「もう大丈夫だから、頼むから……早く、して」

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