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第1話 踏みつけプレイ

 カッコ良すぎて困る。  そう言うとよく、嫌味か? だとか、カッコ良すぎて困ることはない! だとか、そういう反論を受けることが多い。  けれどカッコ良すぎると、それはそれは困るものなのだ。  例えば、斎藤くんはカッコいいよね。でも気さくで嫌味がなくて、みんなに優しいよね。  などと、そう周囲が見た目で勝手に決めたイメージを口々に唱える。  そんな期待に応えた結果、俺の自我とは別の人格が受け入れられてしまう。  いつも周りの目を気にして、期待されるとついその通りに演じてしまう。本当の俺はそんなのじゃないのに。それをやめたら楽になるのだろうが、周りの目が気になるのでやはり期待通りの『斎藤くん』を演じてしまう。  そんな俺が帰宅部を貫いているのは、ニセモノの俺がバレないようにするためだ。  ここでも斎藤くんは運動得意だから○○部に入ればいいのにだとか勝手に言われてしまう。運動は得意なわけではなく、体育の授業でだけこなせる程度にこっそり練習しているだけだ。出来ないとみんなの思い描く『斎藤くん』から逸脱してしまうから。  そんなニセモノの俺が唯一心許せるただひとりの人がいる。  1年の旭くん。俺は彼に会うため帰宅部のくせに今日もバスケ部へと顔を出した。  バスケ部の練習場は相変わらず活気に満ちている。きょろきょろとコートの中を見渡すが、旭くんはいない。 「やあ、鳶坂! 旭くんいる?」  アウェイの場所では声をかけやすい人に話し掛けるに限る。クラスメイトでありバスケ部主将の鳶坂に真っ先に声をかけた。 「また来たのかよ斎藤。旭ならさっき来たとこだぞ。多分まだ部室で着替えてんじゃねえかな? アイツ最近、いつも遅れて来んだよ」 「そうかそうか。鳶坂ありがとう、助かったよ」  そう言って鳶坂に背を向ける。向かうはバスケ部の部室だ。 「おい斎藤」 「なんだい?」  後ろから呼び止められ振り返ると、心配そうな表情を浮かべた鳶坂が俺をじっと見つめていた。 「なんつーか、お前、旭のこと、なんかしたり……トカ、してねえよな?」 「仲良くしてるだけだよ? いじめでも、してると思ったかい?」  どうやら何かよからぬ風に思われているらしい。  にこりといつものクラスメイトに向ける笑顔を浮かべてそう言うと、鳶坂は慌てて手を振り打ち消すようなジェスチャーをした。 「も、もちろん斉藤が人をいじめたりする奴だなんて思ってねえぞ?!」 「キミが心配するようなことはないさ。安心して?」 「なら、いいけど。旭のやつ、お前が会いに来るようになってから、練習中ボーッとすることがあるから」 「ハハッ、さすがバスケ部主将だね。でも、本当に大丈夫だから、ね?」 「まあ、お前イイヤツだもんな! ごめんな、変なこと聞いて」  鳶坂こそ素直で、裏表のないイイヤツだ。俺みたいなニセモノのイイヤツとは違う。  だからこういう部活動の主将なんて役割が回ってくるんだろう。 「いいや、こちらこそすまない。なんだか気を遣わせたね」 そう言って鳶坂に謝ると、俺はバスケ部の部室へ向かった。  バスケ部の部室の扉を開ける。開けた瞬間、独特な、いかにも男子、といった臭いがした。 「旭くん、いるかい?」 「斎藤先輩……」  旭くんは俺よりも背が高い。だから必然的に見下ろすような格好になるのが堪らない。 「あ、あの……来たよ」 「最近、主将に怪しまれてます。少し場所を改めたいのですが」 「あ、うん! えっと、旭くんに任せるよ!」  特に世間話をすることもなく、ただ淡々と必要なことだけを話す。 「じゃあ、場所はまた後ほど。で、今日はどうされたいですか?」  この瞬間はいつもドキリとする。何をされたいのかを旭くんは必ず俺の口から言わせたがる。正直、自分からしてほしいことを言うのは苦手だ。  無理矢理、旭くんのしたいがままに、痛みを受けたい。 「あっ、旭くん……あの」 「さっさと言いなよ」 「あっ、ごめ……あの、つ、強く……踏みつけてほしいです」  モジモジとそうねだると、旭くんは深いため息をつく。俺はそれを了承と受け取り、壁にもたれ足を投げ出して床に座った。  開いた両足の間に旭くんが近付いてくる。そしてバスケットシューズを履いた旭くんの足が、俺の股間をグニッと踏みつけた。 「んはぁああ……っ!」  ひくひくと歓喜に持ち上がる自分のそれと与えられる痛み。そして旭くんの俺を見る、汚物を見るよな眼差しに、俺の体は快楽に震えた。 「あさひく、んんあっ」 「踏まれて、気持ちいいんですか? 斎藤先輩」 「ひ、ああっ!」  グギュギュ、とさらに強く踏まれる。その瞬間、あっけなくパンツの中を精液で汚した。 「あ……ああっ」 「踏まれてすぐイクとか、マジでド変態っすよね、斎藤先輩って」 「待っ、あふぅ……!」  果てたそこを、まるで大人がタバコを踏みつけて火を消すように、さらに踏まれるとグチグチと音が鳴る。  じんわりとパンツの中で溢れた精液がズボンにも染みたことを確認すると、旭くんはようやく俺の股間から足をどけた。 「バッシュ、汚したところきれいにしなよ」 「うん……っ! ごめんね、旭くんごめんね」  旭くんはロッカーに肩を預けてさっきまで俺の股間を踏みにじっていた片足を上げた。  キレイに手入れがされているバスケットシューズの靴底はほんの少し濡れて光っている。俺はそのバスケットシューズの靴底に舌を這わせてその部分を舐め取っていく。  舌先から鼻に抜ける青臭い臭い。たまにその靴底で顔をこすり上げられる。その度に惨めさと屈辱感に興奮した。 「斎藤先輩、すげぇ顔っすよ」 「へあ、んぁあひゃひくん……」  ぺちゃぺちゃと音を立てて靴底を舐め続け、ようやくきれいになった頃に旭くんは足を下ろす。 「じゃあ俺、練習行かないといけないんで」  唾液で濡れたバスケットシューズの靴底を俺のズボンの太もも部分で拭き上げて、旭くんは部室を出ていった。  バスケ部の部室に放置され、俺はくったりと横になり天井を見上げた。  からだに与えられた痛みを伴う快楽にまだ蕩けている。旭くんだけが俺に与えてくれる快感だ。

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