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第3話 お預け
「で? ちゃんと俺の舐め犬になる気あるんですか?」
「あるよ!」
旭くんがパンツとズボンを穿きながら言うので即答する。
「斎藤先輩、すぐに調子に乗るからなぁ……」
「ごめん、その、好きだから」
「ふぅん……俺も、斎藤先輩が好きですよ」
制服を着た旭くんが椅子に座った。足を組み、組んだ上の右足を俺に差し出してくる。
「靴、脱がせて……靴下も」
言われた通りに上履きと靴下を脱がせると、きれいに切り揃えられた爪の乗った足の指があらわになった。
思わずそのきれいな足に見とれていると、その足で俺の顔面を叩かれる。
痛みにぞくりと震えていると、今度は旭くんの爪先が俺の喉仏を突く。
外側から与えられるえずくような苦しさにもう俺のソコは硬く持ち上がって、先端からは先走りが滲んでいる。
「じゃあ斎藤先輩、舐めていいよ」
「うん……っ!」
差し出された旭くんの足の親指を舐めてしゃぶる。指紋や、何度か皮が剥けて部分的に硬くなった皮を舌先に感じた。
足の指の間。大きな親指に一番小さな小指。親指よりも長い足の人差し指。土踏まずのくぼみ、つるんとしたかかと。そのすべてがいとおしい。
なにより運動した後特有の、むせかえるような蒸れた汗のにおいにうっとりする。
そんな旭くんのにおいを嗅ぎつつ、きれいなからだの一部を舐めていると、まるで汚れた俺の心が浄化されるような気分になるから不思議だ。
夢中で舐めていると、ちゅぽんと音を立てて俺の口から旭くんの足の指が引き抜かれた。
「もういいよ……」
唾液で濡れた旭くんの足が俺の顔で拭われる。
「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
まだ勃起したままの俺の股間を眺めながら旭くんが言う。
「あっ、うん……」
ご褒美かと思っていたけれど、これは勝手に旭くんのアナルを舐めたお仕置きだったようだ。
どうにか萎えさせるしかない。円周率を心の中で暗唱しながら制服を着ていく。
家に帰ったら今日の旭くんをおかずにありがたく抜かせてもらうことにしよう。
途中の駅まで一緒に帰る。
高校からは旭くんの方が少し遠い。
今の時間帯は学生よりも仕事帰りのサラリーマンの方が多かった。
「そう言えば鳶坂に付き合ってるって言ったんだよね? 明日なんか言われるかなあ。めっちゃ鳶坂に旭くんのこといじめてるって疑われたからなあ」
「あんまり気にしなくていいと思いますよ。いじめ云々は俺にも同じこと言ってましたし。いじめだのが問題になったら普通にインハイ予選に差し支えますからね。単純にそこを心配してるんだと思います。まあ、今日に関しては斎藤先輩の頬に俺のバッシュの跡がついてたからじゃないですかね?」
「え、そうなの?」
思わず今日蹴られた頬に手を添える。もう足跡は消えているらしい。
「ちょっと斎藤先輩の顔がエロかったんで興奮しすぎました」
いたずらっ子のように笑う旭くんは可愛いと思う。
「そういえば、もうすぐ夏休みだね」
「その前に期末試験ですよ。俺も明日からテスト前で部活が休みです。先輩は受験勉強しなくていいんですか? 3年の先輩、スポーツ推薦組以外は勉強ヤバイって言ってましたよ」
「俺は専門学校だからねえ……」
美容師の専門学校へAO入試で受験することが決まっているし、普通の受験生とは違ってそこまで必死に勉強をしなくてもいい。
学期毎のテストを落とさないことと、出席日数を気にしておけば問題ない。
「あと夏休みなんですけど、合宿になりました。4泊5日です」
「ええ~!」
学生の一大イベント夏休み。俺は部活はしていないからよく分かっていなかったけれど、部活をしている生徒に夏休みなんてものはないらしい。
「合宿が終わればすぐにインターハイの県予選もあるので」
「そっか、そうだよね」
土日も部活で忙しくしている旭くんと夏休みはデートができるんじゃないかと少し期待をしていたけれど、どうやらそれは無理らしい。今まで部活とは縁のない生活をしていたから気がつかなかった。
「あ、今度からなんですけど」
どこから手にいれたのか、廃部になった部活が使っていた狭い倉庫の鍵を旭くんは持っていた。
「これどうしたの?」
「鍵を職員室から拝借してきました」
「そ、それ悪いことなんじゃ……」
「はあ? 学校でアンナコトしてる人が何言ってるんですか?」
学校くらいしかアンナコトもコンナコトもできないことが問題なのに。
「でもすぐバレるんじゃない?」
「開かずの間の作り方、中学のときの先輩が教えてくれたんですよね。詳しくは割愛しますけど。ま、鍵を変えられたらそのときは別の場所を考えましょう」
最寄り駅到着を告げるアナウンスが電車内に響く。
「じゃあ先輩、また明日」
「うん、また明日ね!」
ドアが閉まるまでホームで旭くんに手を振る。
旭くんはシッシッと手で払うジェスチャーをしつつも、笑っていた。
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