75 / 116

8-8

低いから、襲わない。 それは、目が節穴なだけ。 鳴澤家の若君は、貴方を、襲う気満々です。 私が、寝惚けている深李様に、キスした時の。 辺りに漂った冷たい空気。 何よりの、証拠だと思いますが…。 身長の部分を抜かせば、深李様が言う、スペックに該当する。 お家柄は、由緒正しき旧家で、有名な『鳴澤家』。奈篦様を筆頭に、旦那様である詠清様は、お人柄も良い男性であり。 椅子に腰を下ろしている彼は、若いながら、御上という立場。 一般人では、手が届かない頂点に立つ存在で。 周りの旧家の者達が、色目を使い、喉から手が出る程に欲しい人間。 何処から、どう見ても、彼は、深李様と同じ御曹司。 「な、倉科が、心配する程の人物じゃないぞ!イケメンだけど、コイツの場合は、残念なイケメンだし」 ー…残念なイケメン? 深李様の言葉に、首を傾げる私。 何処が、残念なのかを、お得意の作文用紙に書いて欲しい。 しかも…。 きっちり、三百文字ぐらいで、鳴澤 克樹の残念な所を纏めてくれると助かります。 深李様、得意じゃないですか…。 志龍様直伝の執筆で、説明文書くの。 あ、違った。 読む方が得意なんだった。 声に、強弱付けて、読むんです。 ー…説明文を。 これを聞いた者は、大層、感激すると評判なんです。

ともだちにシェアしよう!