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大体、知っていると言えば、倉科の女性事情ぐらいで、口説いているシーンしか浮かばない。 かえって、アイツ以外の、色仕掛けやる輩が、居るかも解らないんだ。 しかも、寄ってくる女性は、皆、ブランド品級の、美人が多い。ミスも居たし、映画女優、大物女優とかも居たな。 香水の甘い香りは、高級品というのが解るくらい、仄かに、香ってくる。 髪も、サラサラだったりして、正に、倉科好みの女って、感じだ。 一方、俺は、寄ってくるのが男性。 鳴呼…。 彼方側系の人が、手招きしてくるんだ。 高級品の、スーツ、カバンは、ダンヒルだし。 ー…靴は、革で、黒光りだし。 しかも、身長は、高い。   スラッとした男がだな、笑顔で、甘く、囁く。 『君、今夜、どう?』 これが、小説なら、美味しいのに。 俺自身じゃ、萌えもしない。 『あ、そんな、俺みたいな者が、貴方の相手なんて…』 頭に、膨らませる初なシーン。 場所は、三ツ星ホテルの、ラウンジ。 ロックグラスには、バーテンダーが、丁寧に割った丸氷で、大人の男性に相応しいブランデーは『山崎』。 若干、溶けた氷が、カランと、鳴る。 夜景が、最高な場所で、ピアノの音楽は、ジャズより、敢えてのクラシック。静かに、演奏されているあたりが、ミソ。 「『君は、お酒が、苦手かい?』なんて、エスコートする 男。それを、緊張のあまり、ガブ飲みする年下美少年」 お酒って、憧れだな。 母上様みたいに、強い筈なんだけど、未成年の為に、呑めない。 しかし、俺は、知っている。 従兄弟は、叔父の影響で、密かに、呑んでいるのを。 ー…悔しい。 負けている気がする。 何故、こうも、格差があるのか。 俺の舌も、落ちていないと、思うんだ。 それなりに、料理も、食べてきているし。

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