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風紀委員は代々推薦制で、その仕事の特殊さから、中等部から一貫して担当している。今年は高等部より遊馬が生徒会に移動になったため、代わりに志木をスカウトしたのだ。スカウトした先輩が責任持って一人前になるまで指導するのが伝統で、森塚も志木に少しずつ仕事を教えていたところだ。
しかし彼が書類作成頼まれていたなんて、聞いていない。聞けば、昨日指示されたばかりで、森塚は入学式の準備に駆り出されていたため、志木の面倒を見ることができなかった。困った志木は、鬼の風紀委員……もとい風紀副委員長・山倉に助けを求めたのだった。
なぜそこで自分に連絡が来なかった、せめて委員長に話を通していれば……悔やんだところで起きてしまったことはしょうがない。見れば締め切りは今日の昼までになっている。どうしていいか分からないまま、焦ってしまったのだろう彼のことを、責めることはできない。急ごしらえだが、それなりの見た目にはしておかなければ。
「これ、備品チェックがどうなっているかの確認要請だよな?そしたら、まずは備品がしっかり揃っているか各部活の部長か担当者に確認しに行くんだ。えっと……、確かここに、……あぁ、これがそのチェック用紙だから、これに記しながら行けば記入漏れはないから」
仕事自体は至って簡単なものだ。しかし、何も聞かされていない者にとっては、難しいだろう。たまに生徒会から要請があって確認しに行ったことはある。確かに例年この時期ぐらいだったとも思う。
だが、一年生だと分かっていて仕事を頼んだのなら、そいつは相当根性がねじ曲がっていることになる。さて、責任者は誰なのだろうか。
「……こいつかよ」
森塚の低い声に、志木はビクリと肩を震わせた。責任者の名前に記されていたのは、生徒会会計・日野原真琴であった。
森塚の通う藤ヶ丘学園は、生徒側の権力を二つに分散させている。生徒会と風紀委員。この二つは、権力自体は均等なのであるが、力が対等であれば、片方を目障りに思ってしまうもので、両者はすこぶる仲が悪かった。
当然、森塚も生徒会関係者とはあまり会話を交わさない。とりわけ、日野原とは顔を合わせれば、すぐに口喧嘩が始まることで有名であった。それは中等部時代にまで遡るが、今回は割愛していこう。
しかも、今回志木がミスをしたきっかけを作った人物だ。もしかしたら、自分が指導する後輩にわざとミスをさせ、そのとばっちりを受けさせるためにしたのではないか。憶測に過ぎないが、顔がいい分、何をしても許されると思っている節があるあいつのことだ。本当にそうかもしれない。
とにかく、できる限りサポートをするとして、まだ自分の仕事も残っている。
頭の中でスケジュールを組み立て、なんとか、いけ、いけるか……?
疑問が残るが、やるしかない。もう新学期の朝会も始まってしまうため、志木を教室に行かせ、森塚も自分のクラスを確認すべく、下駄箱へ急いだ。
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